2005年にORGABITS(ORGABITS)を立ち上げてから早15年。その間、ファッション業界は大きく変化して、今やオーガニックコットンの認知率は7割を超え、多数のブランドがオーガニックコットンを使った洋服を販売しています。そんな中、オーガニックコットンを紹介し、広げるために生まれたORGABITSは、大きな変化を遂げようとしています。
このプロジェクトは今後、どんなことをしようとしているのでしょうか。ORGABITSを立ち上げた豊島株式会社 営業企画室室長の溝口量久に、ORGABITSの誕生秘話から今後の展望まで、じっくり話を聞きました。聞き手は、ORGABITSアンバサダーの鎌田安里紗さんと、ORGABITSプロデューサーの小出大二朗です。
オーガニックコットンの本当のところ
鎌田安里紗さん(ORGABITSアンバサダー/以下、敬称略):ORGABITSを立ち上げられた当初、溝口さんが大事になさっていたのは、どんなことでしょうか。ブランドさんがオーガニックコットンを使いやすくすることでしょうか。
溝口量久(ORGABITS/以下、溝口):一番重要だと思っていたのは、オーガニックコットンのことを正しく伝えることです。当時は、オーガニックコットンは実際とは違う印象を持たれていました。オーガニックコットンは、「肌にいい」とか「肌触りがいい」、「風合いがいい」、「染めてはいけない」と考えられていて、一部の環境意識が高い人のものになっていたんです。
でも実際には、普通のコットンだって残留農薬や染料や漂白剤が、製品に残っていることはまずないですし、オーガニックコットンはちょっと高いだけで、着る人にとっては何の変わりもありません。ただ、環境にも生産者さんにも非常にいい。それを伝えたかったんです。
鎌田:せっかくオーガニックでコットンを育てているのだから、漂白したり染めたりして手を加えない方がいいという考えの方もいますよね。
溝口:それはすばらしい考え方だと思います。そもそも、1960年以前は世界中でオーガニックコットンを作っていましたが、ベトナム戦争以降に農薬を使って土地を汚すようになってしまったんです。だから綿花と農薬の深い関係は5、60年の歴史です。一方で、オーガニックコットンはここ30年くらいの歴史です。僕らのちょっと前の世代の方々は、自分たちの世代でコットンを取り巻く環境が変わってしまったという意識があって、だからこそ真摯に、オーガニックコットンをすばらしいものだと紹介したんだと思うんですよ。
鎌田:染色の工程を経ることで最終製品にネガティブな影響がでることはないのですか。
溝口:天然繊維は、染色の前に水とケミカルで生地を洗います。オーガニックコットンを素晴らしいものだと考える方々の中には、その工程をできるだけ避けたいと考える方もいらっしゃいます。
鎌田:化学繊維にはその工程はないんですか?
溝口:化学繊維もあるのですが、もともとそれほどゴミがついていないのであまり洗わなくても良いんですよ。染色工程だけ切り取ると、化学繊維のほうが環境負荷が低いとも言えます。でも僕は、洋服を着るのにまず「楽しい」と思ってほしいんです。その後で、「あ、実はオーガニックコットンなんだ」と気づく。そういうものだと思うので、楽しく売りましょう、染めましょうと伝えたいと思ったんです。
鎌田:肌にいいなど、着る人にとって影響があるならば「オーガニックコットン100%にしなければいけない」と思うかもしれないですが、実際には農家さんと自然環境に影響があるものですものね。であれば、今は全世界のコットンの1%にも満たないオーガニックコットンの割合が、オーガニックコットンが10%や20%の混ぜられた布が増えることで、上がっていった方がいいですよね。ところで、オーガニックコットンと普通のコットンでは、原料代はどのくらい変わるんでしょうか。
溝口:綿花自体は、ORGABITSを始めた頃は5、6倍の差がありました。今は2、3倍です。それが糸になると1.5倍ぐらいです。その後製品になると、100%の場合は1.2倍から1.5倍ほど。でも、その糸を10%使うのであれば、原価はかなり近くなります。
鎌田:それもあって10%という考え方が出てくるのですね。それなら値段を考えずにできますよね。