INTERVIEW
2023.02.07UP
会社員をしながら始めたスーパーで、みんなでゼロ・ウェイストを目指す。斗々屋ノイハウス萌菜さんのあゆみ

 食品トレーやパッケージ、シャンプーなどの容器や詰め替えの袋……余計なものを買ったつもりはなくても日々出てしまうゴミ。買い物客が、家でそういったゴミを出さないで済むようにしたお店が、京都と東京・国分寺にあります。日本初のゼロ・ウェイストなスーパーマーケットを展開する、斗々屋(ととや)さんです。
 みんなで “ちょっと(bits)ずつ” 地球環境や生産者に貢献しようという想いから始まったORGABITS(ORGABITS)の情報発信サイト「BITS MAGAZINE」では、「ちょっといいこと」を実践し続けている方々にインタビューを行っています。今回は斗々屋さんをなぜ始めたのか、斗々屋のノウハウを教えるオンライン講座を行うのはなぜなのか、これから挑戦していきたいことは何かなどを、広報のノイハウス萌菜さんに聞きました。聞き手はORGABITSアンバサダーの鎌田安里紗さんと、ORGABITSディレクターの八木修介です。

ゼロ・ウェイストが意味するもの

鎌田安里紗さん(ORGABITSアンバサダー/以下、鎌田):斗々屋さんは、ゼロ・ウェイストの量り売りスーパーということですが、改めて、どういうところが一般的なお店と違うのかを教えていただけますか。

ノイハウス萌菜さん(株式会社斗々屋広報/以下、ノイハウス):瓶など容器に詰めた商品にはリターナブルなものを使い、量り売り商品は持参いただいた容器またはレンタル容器を使用いただくことで、消費者の方が家に着いた時にゴミを出さないで買い物ができるようにしています。拠点は京都店と東京の国分寺店で、京都店が700品目ほど、国分寺が200品目くらい、取り揃えています。ゼロ・ウェイストという言葉はまだそこまで知られていないと思うのですが、ご消費者の方に瓶やタッパー、ハンカチ、木箱、入れて持ち運べればほぼ何でも良いんですが、容器を持ってきてもらって販売しています。

鎌田:初めてゼロ・ウェイストという言葉を聞いたときに、「ゼロってありえるのかな?」とちょっと混乱して。ゴミを出さないで生活するのって本当にできるのかなと思ったんです。

ノイハウス:「本当に?」って疑いたくなりますよね。

鎌田:でも、それはコンセプトとして、限りなくゴミを減らす、究極出さないことを目指して努力していくことも含めて、ゼロ・ウェイストと呼んでいるんですよね?

ノイハウス:そうですね。人によって解釈に幅がある言葉だとは思いますが、私はそう解釈しています。ただ「努力しています」で良いのであれば誰にでも言えてしまうので、企業としては「消費者が家庭でゴミを出さないこと」を絶対条件にしています。お店のバックヤードに関しても各生産者さんとお話をして、ゼロ・ウェイストでの納品ができないかと相談してから取引を始めているんですよ。

鎌田:ゼロ・ウェイストで納品できるかどうかを最優先に考えて、仕入れ商品を決めているということでしょうか。

ノイハウス:いえ、まずは無農薬のものとか、自然災害の被災地支援につながるようなものなどの中から仕入れたい商品を探して、それから納品をゼロ・ウェイストで可能かとどうか相談して仕入れています。今まで声をかけた生産者さんは、たいていゼロ・ウェイストに関心を持っていらっしゃいます。ただ、葉野菜などは特に、今までだと袋に入れていたから品質が保てるのか心配だとおっしゃることも多く、そこは議論と試行錯誤をしつつ進めています。

鎌田:無農薬の宅配野菜なども、ビニール包装に入っていることは多いですよね。長持ちさせることとゼロ・ウェイストを天秤にかけてビニール包装を選択する生産者さんもいると思いますが、品質維持のためにどう対策してるのですか?

ノイハウス:まだオープンから1年半なので全てをマニュアル化することはできていないのですが、ミストをかけたりアクリル板を設置して水が飛ばないようにしたりと試行錯誤しています。ただナッツやチョコ、ドライフルーツなどは輸入品もけっこうあって、そういうものは段ボールはもちろん、場合によっては中身のゴミも出てしまいます。とはいえ、ヨーロッパなどは環境配慮の取り組みが進んでいるので、プラだけれど生分解性のものだったりします。プラがまたお店で使えるようであれば再利用しますし、生産者さんとコミュニケーションをとりつつ、ゴミを極力減らしています。

先にコミュニケーションをとり、道を作る

鎌田:地道な工夫の積み重ねでゴミを減らしているんですね。そうやって生産者さんとコミュニケーションをとると、その生産者さんが他の人に卸す時にもそのオプションを提案できるかもしれませんね。

ノイハウス:実はまさにそれが始まっているんです。ベルギーのお店からチョコを輸入しているんですが、そこでは普通は1枚ずつパッケージした板チョコを売っているんですね。せめて20枚でもいいからまとめてほしいとお願いしたら、箱を開発して50枚ぴったり割れないようにぎゅっと入るようにしてくれたんです。それを他への卸でも使ってくれているんですって。

鎌田:すてきですね。以前にステッカーを作ろうと思った時に、フィルムや紙、糊、インクなどで環境により良い物をつくってくれるところを探したら、結局パタゴニアさんとかさまざまな環境団体が発注しているところに辿り着いたんです。で、先方の方が「発送時の梱包は、パタゴニアさんなどに送る時にはノープラで送っていますが、同じようにしましょうか?」と聞いてくれて。初めてのことで包装のことまで考えが至らなかったけれど、先人が道をつけてくれたからできることがあるんですよね。一見地味なことですが、社会が変わり続けるためには、こうやって先にコミュニケーションをとってくれている人がいることが大事ですよね。斗々屋さんというがあることで、お客さんの買い物の仕方も変わるけれど、実はその裏側も変わっているのでしょうね。

ノイハウス:そうですね。1回システムを作ってしまえば広がりますしね。私たちも納豆に関しては作る段階から生産者さんと一緒に考えて、ゼロ・ウェイストを目指しています。納豆は通常だと小売用の発泡スチロールの中で発酵させるのですが、そうすると確実にゴミが出てしまいますよね。そこで京都の納豆屋さんに、私たちのオーガニックの大豆を卸して、斗々屋がレンタル容器として使っているステンレス容器を使って発酵させてもらい、そのまま納品してもらっているんです。私たちもそのまま量り売りで販売して、空になったらまた生産者さんに持っていって。それはまだ、他のところで広がっているとは聞いていませんが、ノウハウとして広がっていけば良いのにと思っています。

次のページ知恵を独自ポジションとして独占するのではなく、どんどん共有していく

1 2 3

Page Top