INTERVIEW
2023.02.07UP
会社員をしながら始めたスーパーで、みんなでゼロ・ウェイストを目指す。斗々屋ノイハウス萌菜さんのあゆみ

知恵を独自ポジションとして独占するのではなく、どんどん共有していく

鎌田:納豆のノウハウも、広がれば良いと考えてらっしゃるんですね。斗々屋さんが特徴的だなと思うのが、ゼロ・ウェイストのお店を始めたい人向けのオンライン講座をなさっているところです。ゼロ・ウェイストのお店として独自ポジションを保とうとするのではなく、ノウハウを共有してみんな自分の地域でやってくださいというスタイルがすてきだと感じました。ビジネスだとノウハウを秘密にするのが一般的ですよね。

ノイハウス:いい仕組みを抱え込んでブランド化してしまうと、広がらないんですよね。例えば、リユースカップのリターンの仕組み、フードロスアプリなど、すてきなものはいろいろあるけれど、競争していることによって、まだ広がっているとはいえない状況です。それこそが大きな問題に繋がっていると思います。それよりも、私たちはゼロ・ウェイストのお店を手軽に始められる人が増えて、広がってほしい。みんながやれば色々動きが速いんじゃないかなと思いました。

私たちは卸事業もやっているんです。ゼロ・ウェイストのお店を開きたいという個人事業主の方も多いので、そういう方がいかにリスクを下げて始められるかを考えて支援しています。全部がオンライン講座を受けたお店ではないですが、卸事業という形で何かしら関わらせていただいている「斗々屋フレンズ」、通称トトフレが全国80件くらいあります。大手向けにはコンサル事業をやって、できるだけ早くいろんな人にゼロ・ウェイストに関わってもらえるようにと考えています。

鎌田:すてきですね。オーガニックコットン業界でも同様のことができないものかしら。いろんな考え方によって、あまりうまく協働できていないような気もします。八木さんはその点、どうお考えですか?

八木修介(ORGABITSディレクター/以下、八木):コットンの認証には、GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)、BCI(ベター・コットン・イニシアティブ)、OCS(オーガニック認証)といろいろありますから、競争しているようにも見えますよね。ただ、それは優先順位の違いだけかもしれません。GOTSはトレーサビリティだけではなく人権にもフォーカスし、OCSはトレーサビリティにフォーカス、BCIはトレーサビリティの確保よりも、綿花栽培の現場を改善し、農家を後押しする要素の強い取り組みです。それぞれ大事にしていることが違うんですよね。だから、もしかしたらお互いがノウハウの共有をしていくこともできるのかもしれません。

ノイハウス:ゼロ・ウェイストは逆にそこまで広がっていないからこそできるという面もあるかもしれません。オーガニックフードなどは、多くの方がさまざまな考えを持って真剣に取り組んでいるので、単純に統一できないですしね。

ランチで感じた違和感から一歩を踏み出したモナさん

八木:斗々屋は2021年7月に始まったと聞いていますが、始めたきっかけはどんなことだったのでしょうか?

ノイハウス:2005年から卸事業の会社をやっていた代表の梅田(温子さん)と2019年7月に初めて会ったんです。その頃私はステンレスストローを販売していたんですが、梅田が青山ファーマーズマーケットで個包装なしのお野菜などを量り売りで出店するから、ストローを一緒に売らないかとDMをくれたんです。それで意気投合して、2ヶ月後には代々木公園の近くに日曜日だけ開くお店をオープンさせました。当時は会社員だったので日曜日だけだったのですが、お店に立つことやSNS発信など、全般的に担当していました。その後、人も増え、国分寺に移転することにもなったので、今は私は広報担当をしています。

鎌田:ノイハウスさん自身のバックグランドもお聞きしたくなりますね。ノイハウスさんはのーぷら No Plastic Japanの代表という肩書きで発信なさることも多いですが、会社に勤めながら、のーぷら No Plastic Japanとして、ステンレスストローも販売していたということでしょうか。

ノイハウス:そうです。会社員をやりながら、2018年にのーぷら No Plastic JapanのInstagramのアカウントを作って発信を始めて、ステンレス・ストローを売り始めました。きっかけはヴィーガンのおしゃれなカフェが店内で使い捨て容器ばかり使っていて残念に思ったり、オフィスの隣のコンビニで同僚がランチを買うときにおしぼりとカトラリーも毎回もらって捨てているのを見て「使い捨てストローや使い捨ての容器って本当に意味がないな」と思ったりしたことです。ちょっと変えるだけで意味があると思ったのでストローを販売することにしました。工場に問い合わせて、最初は100本くらいの仕入れから始めて、ウェブサイトで販売したんですよ。のーぷら No Plastic Japanのインスタアカウントでニュースなどの発信をしていたので、そのフォロワーさんがコミュニティのようになっていて、その人たちが最初は買ってくれ、次第に企業案件が増えて、今はお店への直接卸が多い状況です。

鎌田:さくっと簡単におっしゃいましたけれど、プラスチックのストローがお店で出てきて気になったからと言って、ステンレスのストローを製造販売する人って、あまりいないと思うんです。なぜ行動できたんでしょう?

ノイハウス:ヴィーガンのカフェに、「地球にやさしいイメージを打ち出しているのに、カトラリーやカップがプラなのはもったいないと思う」とメールしてみたんですね。とてもポジティブなお返事をもらって、そこは今では使い捨てもほぼなしで運営されています。ただ、そのメールを書く時に、「同じ思いの人はいっぱいいるはずなのに、私の個人名で書くと、単に一人のクレーマーにしか見えないな」と感じたんです。そこで、のーぷら No Plastic Japanという団体、といってもInstagramのアカウントで運営も私1人なんだけれど、立ち上げたんです。

鎌田:ノープラスチックジャパンは複数人で運営しているんだと思っていました!

ノイハウス:ううん、私ひとり(笑)。今だから言えることですけれど。団体として見えるように発信して賛同者を集めようと思っていたので、最初は顔出しもせずに日本語と英語でプラ系ニュースを発信していました。海外の新しい政策や自然動物へのプラスチック被害などに加え、ライフスタイルとしてステンレスストローを使うシーンなどを投稿していました。ただ、次第に私個人として話す場が増えたのと、こういった環境系のトピックスをインスタでもっと上手に発信できる人が増えたので、インスタでの私の役目は終えたかなと思って、今は投稿はしていないです。

鎌田:今はJ-WaveのSTEP ONEのナビゲーターのお仕事がありますしね。

ノイハウス:そうなんです。月曜から木曜日、毎朝9時から1時の4時間を担当しています。もともとあった番組なのでサステナビリティなどに特化した番組ではないんですが、いろんな内容を扱う中で、サステナビリティのトピックも扱っています。サステナビリティ特化型の番組も増えてきていますから、逆にこういうふうにさらっと伝えたほうが「あ、そういえばラジオでステンレスストローって言ってたな」と、ふっと頭に入りやすいんじゃないかな、なんて。

鎌田:以前にラジオに出させていただいた時に、ちょっとお話ししたことに返ってくる反応が、他メディアよりも密で驚きました。ラジオって目からではなく耳から情報が入るからか、届き方が独特ですよね。毎日聞くことを習慣にしている人がいて、濃いつながりがあると感じました。

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