INTERVIEW
2021.01.15UP
オーガニックコットンの認知率が7割を超えた今、ORGABITSが目指すもの

寄付プロジェクトが始まったわけ

鎌田:チェトナオーガニックに寄付をするだけでなく、ORGABITSは桜並木プロジェクトなど、さまざまな団体を支援していますよね。それはどういう経緯で始まったんですか?

溝口:ORGABITSを始めて4、5年、オーガニックコットンが売れ始めて3年ほどたったときに、最初に使ってくれたアダストリアの倉地誠さんから、僕らはどのくらい世の中に貢献できたのだろうかと純粋に問われたんです。それで世界のオーガニックコットンの生産量を調べたら、なんと下がってしまっていました。

鎌田:ORGABITSは広まっても、全体のオーガニックコットン生産量が増えるという展開にはなっていなかったのですね。

溝口:このままだと消費者の皆様に伝わらないなと思ったんです。それで原点に帰って、そもそもなぜORGABITSを始めたのかを考えたんですね。その結果、僕たちがやりたかったのは消費者の皆様と生産者を繋げることでした。

一方で、消費者の皆様がなぜORGABITSの商品を買ってくださるかを考えると、その理由はオーガニックコットンを買いたいからではなくて、「何かちょっといいことをしたいから」です。「何かいいことをする」という消費者の方の気持ちに寄り添って、生産者と消費者の皆様をつなげる、ワクワクするような購買体験を提供したいと思いました。

鎌田:たしかに、自分がすてきだと思った洋服が、「何かちょっといいこと」に繋がると知ったら、うれしいですもんね。

溝口:そうなんです。ちょうど、マイケル・ポーター教授がCSR(企業の社会的責任)に代わる新しい概念としてCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)と呼ばれるコンセプトを提唱していらっしゃいました。消費者の方と新しい価値を共有するのが新しいビジネスだと考えて、オーガニックコットン事業を仕切り直したことからORGABITSが変わりました。そしてアトリエ・エレマン・プレザンさんという、ダウン症の方のためのプライベートアトリエを運営している団体さんや、日本クリニクラウン協会という、小児病棟へ赤い鼻がトレードマークのクリニクラウン(臨床道化師)を定期的に派遣する団体さんへの寄付付きプロジェクトを2010年頃に始めるようになりました。

小出:そのアトリエ・エレマン・プレザンさんのプロジェクトで、前回ビッツマガジンで取材させていただいたヘラルボニーの佐々木さんと出会ったんですよね。

溝口:そうなんです。その頃、僕は名古屋の原料担当で、東京のファッションブランドのデザイナーの方なんてキラキラしすぎて話をしづらい存在だったんですよ。しかも佐々木さんはモヒカンで、豊島の展示会に飾ってあるエレマン・プレザンさんの絵の前でじっと腕組みをして睨みを効かせていて。誰も近づけないオーラを出していて、こわかったですよー。笑

まあ、今思えば、そう見えただけかもしれませんが。

鎌田:そうなんですか? 先日の取材の時は穏やかで優しい方でしたよ。笑

ORGABITSが生み出す、仲間としての関係

小出:東日本大震災前からORGABITSファンドを作ろうという話が出ていて、震災後には支援先が増えましたよね。それはなぜだったんでしょう。

溝口:震災前の時点で支援先を絞るか増やすかは悩んでいたんです。ファッションブランドさんのその先にいるお客さんが共感してくれるのが一番なので、ブランドさんに聞いてみようと思っているところに東日本大震災が起きました。支援を始めたらずっと続けていきたいですから、責任を持って運営できる数を考えて、8〜10団体にしたんです。

小出:ブランドさんのその先にいるお客様がうまくその共感してくれるように、バランスよくプロジェクトが組まれているなと感じています。

溝口:ありがとうございます。ブランドさんのその先にいるお客様が共感してくれると、いろんな垣根を超えて繋がれるんですよね。それまで僕たちは商社としてブランドさんと「本当は納品単価が100円上がるんですけれど◯◯円に抑えます!」「素材をこちらに変えることで価格はそのままで」などと商談をする、買い手と売り手の間柄だったんです。でもORGABITSがあると「そろそろ桜並木プロジェクトの時期ですね。今年は何をやりましょうか。店頭ではどんなイベントをすればお客さんに楽しんでもらえますかね」と、プロジェクトをともに行う仲間になります。

また、ブランドさんからも店頭でお客さんに「今年も桜並木プロジェクトをやるんですね」などと声をかけられるとうれしくなるとの声をお聞きしました。お客さんも仲間になるようなものですよね。こうなると、豊島やブランドさんのうちの誰かが人事異動でその部署に居なくなってしまってもプロジェクトは引き継がれていきます。しかも、この場合の発注先はありがたいことに必ずORGABITSなんですよね。

鎌田:すてきですね。ビジネスとしても強いですし、みんながうれしくなって繋がっていくんですね。

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