INTERVIEW
2021.10.13UP
俳優・活動家TAOさんが語る、ファッションのすばらしさとそれを楽しむために必要なこと

TAOさんの考える、これからのファッションの楽しみ方

小出:悩みは尽きませんが、そんななかでTAOさんのお考えを聞きたいことがあります。TAOさんはもともとはファッションがそこまでお好きではなかったとはお聞きしましたが、さまざまなブランドのショーでお洋服を着てこられて、今もパートナーの方とファッションブランドを立ち上げられているので、お洋服との関わりは深いですよね。安里紗さんも僕も洋服が好きで購入をするし、Bits magazineの読者の方にも洋服好きは多いと思うのですが、さまざまな取り組みをなさるなかで、これからの時代に洋服を買う時にはどんなことを意識したらいいと思いますか?

TAO:私はすでに洋服をたくさん持っているので、これも特権階級的な発言になってしまうかもしれないですが、今すぐどうしても洋服がなくて困るということでなければ、欲しいお洋服を、雑誌を見たりするのではなく、自分でイメージしてみてほしいです。そして、それに出会うまでじっくり探すんです。

私は今なるべくセカンドハンド、もしくはインディペンデントの小さなブランドさんや応援したいと思う人の洋服を買いたいと思ってるので、そういうところで出会えるかな、出会えないかなと、ドキドキしながら気長に待つことを楽しんでます。

安里紗:私の服を買うときの気分をぴったり言語化してもらったように思いました。欲しいものが浮かんできたら頭に止めておいて、出会うまで待つんです。見つけたら「出会った!!」と思えてとてもうれしいんですよね。

一方で、私はトレンドに無頓着な方だと思いますが、特に雑誌などで見たアイテムでなくても「こんなものが欲しいな」と思っていたものが、実は今季のトレンドアイテムだと気がついて驚くことがあります。街中のおしゃれな人を見て、ほしい気持ちが醸成されていたのでしょうね。それが流行というものなんですよね。

TAO:ファッションの流行を全部を否定する必要はないですよね。ココ・シャネルがパンツルックを生み出したことによって女性の立場や社会に変化をもたらしたり、オリンピックで「ビキニパンツを着用しなければならない」という規定に反対するためにドイツのチームがパンツ型の「ユニタード」を着用し始めたりと、ファッションには文化を作り、社会を変えてきたところもありますから。

ただ、日本では育っていく過程で、人と違うものを楽しむという感覚を育てにくいんですよね。だから流行っていると欲しいと思わされてしまうようなところはあるなと感じます。自分の好きなものを確立できる教育ができたら良いだろうと感じます。

安里紗:そうですね。たとえばインターネットでは洋服を選びやすいように様々な基準、たとえば安い順、おすすめ順、新着順等でリコメンドしてくれる仕組みがあるので、さらに自分の基準で選ぶことが疎かになりがちです。トレーニングが必要ですね。

小出:妥協せずに自分のほしいものに出会えるまで待つ際は値段や人気などで妥協しないことが重要ですよね。教育に関しては、よく安里紗さんとショップの販売員さんをもっと大事に考えるべきだという話をするのですが、販売員さんからそのブランドのバックグラウンドにある思想を聞けることもあると思うんです。そういった、ブランドの思想に関しても洋服を選ぶ判断基準に入れてもらえたらいいなと思います。

安里紗:すっかり話し込んでしまいました。最後に、TAOさんが今後やっていきたいと考えていらっしゃることを教えてください。

TAO:環境や動物の権利に配慮するライフスタイルが窮屈なものとして見えるのは残念だなと思うので、情熱を持って楽しく、本業であるお芝居と両立しながらやっていきたいと思っています。また一人の人間として、何か間違ったことがあれば発信していきたいですし、自分に正直に他人に優しく生きる、そういうライフスタイルが体現できたらいいなと思います。

安里紗:ありがとうございます。私も見習いたいと思います。本日はすばらしいお話、ありがとうございました。

Text: フェリックス清香
Photograph: Martineye(Instagram: dennoooch)

GUEST
TAOさん俳優/環境問題アドヴォケイト
14歳でモデルデビュー、2006年に渡仏しパリコレに参加。その後ミラノ、ロンドン、ニューヨークと数々のトップメゾンのショー、雑誌、ワールドキャンペーン広告に多数出演。
2013年、米映画「ウルヴァリン:SAMURAI」でスクリーンデビュー。その後もハリウッド作品を中心に、国内外で数々のドラマや話題作に出演を続ける。
環境問題やアニマルライツのアドボカシーとしてEmerald Practicesを立ち上げる。同名のSNSアカウントや、ポッドキャストで発信を続ける。
雑誌マダムフィガロジャポンでは身近な気付きから社会問題まで幅広く言及するマンスリー連載「TAO‘S NOTES」を執筆中。
夫であるTenzin Wildのアウターウェアブランド、ABODE OF SNOWのクリエイティブディレクター兼サステイナビリティ・アンバサダーを務める。
現在カリフォルニア在住。
INTERVIEWER
鎌田 安里紗
「多様性のある健康的なファッション産業に」をビジョンに掲げる一般社団法人unistepsの共同代表をつとめ、衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く展開。種から綿を育てて服をつくる「服のたね」、衣食住やものづくりについて探究するオンラインコミュニティ「Little Life Lab」など。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。
Instagram: arisa_kamada
INTERVIEWER
小出 大二朗
豊島株式会社営業企画室所属、ORGABITSプロデューサー。1966年1月神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1989年立教大学経済学部卒業後、株式会社三陽商会に入社。営業、企画マーチャンダイザーを経験後、企画責任者を経て、英国ライセンスブランドのメンズ総責任者を担当。その後、米国ライセンスブランドの事業責任者、マーケティング部門の責任者とあらゆる職務を経験。2017年豊島株式会社入社後、出資会社の副社長を経て現職。
この記事をシェア
  • twitter
  • facebook
  • line
  • はてなブックマーク
  • Pocket

1 2 3 4

Page Top