INTERVIEW
2020.10.23UP
「違和感」を大切に活動を続けるヘラルボニーが、変えていきたいものとは?

今回の「ちょっといいことしてるヒト」は、2018年7月に創業した株式会社ヘラルボニーの代表取締役社長 松田崇弥さんと、チーフ・クリエイティブ・オフィサーの佐々木春樹さん。ヘラルボニーはさまざまな形で「異彩」をモノ・マチ・バショに放つ活動をしています。
ダイアモンドのような「異彩」をくすませているものを取っ払い、さまざまな社会実験を繰り返すヘラルボニーはどんなブランドなのでしょうか。成り立ち、発想の根底にあるもの、近い将来にやってみたいことをじっくり聞きました。聞き手は、ORGABITSアンバサダーの鎌田安里紗さんと、ORGABITSプロデューサーの小出大二朗です。

目指すのは、異彩と社会を繋ぐ接着剤

小出大二朗(ORGABITS/以下、小出):名だたるファッションブランドでデザイナーをなさってきた佐々木さんがジョインなさっていることもあると思うのですが、ヘラルボニーの商品はすばらしいですね。

鎌田安里紗さん(ORGABITSアンバサダー/以下、敬称略):ものづくりに長年関わる目利きの小出さんも、いくつか購入なさったんですよね。私は特に小林覚さんの作品を使った商品に惹かれます。でも、どの柄もすばらしいですね。

鎌田:ヘラルボニーは、知的障害のある方が描いたアート作品を活かす事業をなさっているんですよね。

小出:ポップアップショップなどで商品を手にとって、「実はこのアートは……」とストーリーを伝えられたら、ぐっとくるだろうと思います。

松田崇弥さん(株式会社ヘラルボニー代表取締役社長/以下、敬称略):ありがとうございます。僕たちは知的障害のある作家さんが描いたすばらしい作品をデータ化し、その画像データをブランドさんに貸し出したり、自社ブランドで柄として使ってハンカチやネクタイなどのプロダクトを作ったりして、作家さん側に使用料をお支払いするビジネスをしています。

また、「仮囲い」という建設現場の防音・目隠し用の真っ白な壁を美術館に見立ててアートを飾って街を彩ったり、工事終了後にその壁に使った素材を再利用してバッグを作って販売したり、駅や電車をアートでラッピングしたりという活動もしています。知的障害のある作家さんの作品を様々なモノ・コト・バショに活用し、作家さんに適切な金額を落としていくことにチャレンジしている株式会社です。

佐々木春樹さん(株式会社ヘラルボニー チーフ・クリエイティブ・オフィサー/以下、敬称略):先ほど小出さんが商品をほめてくださいましたが、商品の質は僕らも意識しているところです。松田がヘラルボニーを始めたきっかけの1つが、福祉施設で5時間かけて作った革細工が500円で売られていたことだったんです。

松田はそれを「作品の問題ではなく、プロデュースの問題なのでは?」と話すのですが、僕たちは素材とクリエイションを厳選・吟味し、プロデュースを工夫して、良いプロダクトを作りたいと考えています。たとえばネクタイは、銀座田屋さんという紳士洋品の老舗とコラボレーションして、シルク100%の織で作っているんですよ。

松田:福祉施設に勤めていらっしゃる方は福祉の専門家であって、プロデュースやものづくりの専門家ではないと思いますので、プロデュースを求めるのは難易度が高いと考えています。僕たちは、福祉施設でなかなか実現が難しいことをやることで、才能に溢れる作家さんにお金がきちんと還元できるようにしていきたいたいんです。作家さんの「異彩」と企業などを繋ぐ、接着剤になりたいと思っています。

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