INTERVIEW
2020.08.27UP
プラス数十円で世界平和を買おう。古着でデロリアンを走らせた日本環境設計が考える、「ちょっと」の踏み出し方

再生ポリエステルを使った場合の洋服の価格はプラスたった数十円

鎌田:メリットが多い再生ポリエステルですが、これをまだ企業側がこぞって採用するような状況にはなっていません。障害になっているのは何でしょうか。

岩元:コストだと思います。しかし、そのコストは製品価格にしたら微々たるものなのではないかと思います。リサイクル素材を使ったら、5000円だった洋服が1万円になる、なんて状況なら、消費者だって考えてしまうかもしれません。でも、実際には製品にしたら数十円くらいの差でしかないはずです。5000円だった洋服が5050円になったとしても、商品が魅力的であれば消費者は選んでくれると思うんですけどね。

小出:企業論理とお客さんの気持ちの解離がありそうですよね。企業側は「いやいや、そうは言っても値上げはできない、したくない」と思ってしまう。でも、今のこの時代、お客さんにちゃんと説明すれば、わかってもらえないはずがないと思うんです。

岩元:そうなんですよ。高くしているわけではなく、普通にかかるコストを普通に製品価格に上乗せするということです。50円値上がりしたら買ってもらえなくなるような商品なんですか、と問いたいです。マーケティングしていけば消費者は50円値上がりしても購入してくれると思うんです。

もしそれでも不安だったら、通常5000円のものを、「リサイクル代として今回50円上乗せします。賛同する人は5050円払ってください」と、販売してみたらいいと思うんですよ。

鎌田:それはおもしろいですね! 消費者が意思表示することになりますもんね。

岩元:「500人が買ってくれて、300人が賛同してくれました」とお客さんに報告してもいいですよね。それから、透明性を高めていくと納得感が上がるとも思います。回収にいくらかかって、リサイクル代がいくらで、と全部公開していく方がいい。成果が見えればサステナブルな商品の購買も進むと思います。

鎌田:公開してくれた方がかっこいいと思いますけれどね。でも、数十円というちょっとの価格で、洋服にリサイクルの糸が使えるのですね。その事実をもしかしたら多くの人が信じられていないのかもしれません。

岩元:そうなんですよね。だから、どんどんBRING™の商品を伝えていきたいんです。再生ポリエステルの価格を石油由来のポリエステルと戦える価格に抑えるためには、生産量が増える必要があります。リサイクルのループが一度大きく回り始めれば、ずっと回り続けるはずなんです。少しでも早くそこに辿り着きたいですね。

再生ポリエステルがもたらす世界平和

鎌田:以前に講演会で岩元さんのお話を伺う中で、感銘をうけたのが「この取り組みが世界平和につながる」ということです。生地や糸の話をしていたのに、それが世界平和につながると聞いて、講演会参加者全員が心を掴まれてしまったんですよね。なかなかリサイクルと世界平和はつながらないと思うのですが、岩元さんがそう考えたのはなぜでしょうか。

岩元:特定非営利活動法人テラ・ルネッサンスの創設者、鬼丸昌也さんに10年ほど前に会ったことがきっかけです。テラ・ルネッサンスは「すべての生命が安心して生活できる社会(世界平和)の実現」を目指して活動する団体で、鬼丸さんは紛争の多くが地下資源の奪い合いのために起こるのだと、資料を紹介しながら説明していたんです。

日本環境設計の技術では、原料となるポリエステルの9割が再生ポリエステルとしてリサイクルされるので、石油の使用量を減らせます。しかも何回でも同じポリエステルが使えます。そうすると少なくとも服づくりにおける石油の削減できるんですよ。ですから、それは引いては世界平和につながると考えたんです。 いろんな企業さんにお声がけして一つのプロジェクトを行うことがありますが、競合他社が同じ枠組みに参加することに対して抵抗感を持つ場合もあります。でも、「普遍的に正しいことは何か」と問い掛ければ、みなさん納得して参加してくれ、自社の成功事例をシェアしてくれたりし始めるんですよね。

鎌田:参加する皆さんが一緒に目指したいと思える目標を共有することで、連帯感が生まれていくのですね。岩元さんは単に事業の説明をしてその重要性を説くというよりも、そこにいるみんなの視座を揃え、見る世界を一致させるビジョンを提示してくれるから、どんどん人が集まってきて一緒にやりたいと思えるのだということが分かりました。

小出:本日は、貴重なお話、ありがとうございました。

Text: フェリックス清香
Photograph: Martineye(Instagram: dennoooch)

GUEST
岩元 美智彦さん日本環境設計 取締役会長
1964年鹿児島県生まれ。北九州市立大学卒業後、繊維商社に就職。営業マンとして勤務していた1995年、容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年1月、現代表取締役社長の髙尾正樹とともに日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。2015年アショカフェローに選出。著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。
INTERVIEWER
鎌田 安里紗
「多様性のある健康的なファッション産業に」をビジョンに掲げる一般社団法人unistepsの共同代表をつとめ、衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く展開。種から綿を育てて服をつくる「服のたね」、衣食住やものづくりについて探究するオンラインコミュニティ「Little Life Lab」など。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。
Instagram: arisa_kamada
INTERVIEWER
小出 大二朗
豊島株式会社営業企画室所属、ORGABITSプロデューサー。1966年1月神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1989年立教大学経済学部卒業後、株式会社三陽商会に入社。営業、企画マーチャンダイザーを経験後、企画責任者を経て、英国ライセンスブランドのメンズ総責任者を担当。その後、米国ライセンスブランドの事業責任者、マーケティング部門の責任者とあらゆる職務を経験。2017年豊島株式会社入社後、出資会社の副社長を経て現職。
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