INTERVIEW
2020.08.27UP
プラス数十円で世界平和を買おう。古着でデロリアンを走らせた日本環境設計が考える、「ちょっと」の踏み出し方

今まで専門家の方が何十年議論しても、循環型社会を実現させるのは至難の業だったんです。環境の知識が豊富なだけでは限界があると思います。環境以外のトピックのほうが興味を持てるような大半の人たちが、どうやったら参加したくなるかを考えることが重要です。きっかけは「映画好きだから、デロリアンを見たい」等でいいと思うんです。消費者は楽しくなければついてきてくれませんし、伝播しないんですよね。

楽しい取り組みをしていると、楽しいことをやっている人が集まってきます。そこでまた新しいアイデアが生まれてくる。そういった人々と繋がって、SNS上でおもしろい企画のタネが上がってくることもあります。

それから、参加いただいている企業のご協力のおかげで、BRING™は全国に着なくなった服の回収拠点を展開しています。リサイクル素材から独自開発した製品を販売するECサイトもあります。イベント開催時には、アンケートもとっています。そこから、「消費者は、本当は行政の回収ボックスではなく、自分がファンになったブランドで、商品がまたそのブランドに戻ってくるような形でリサイクルしてほしいのだな」とか「リサイクルをやっていることで、消費者がブランドのファンになるんだな」などと、消費者の声を直接確認することができます。それも楽しい企画づくりに繋がりますよね。

ブランドや消費者の気持ちを汲んだBRING™の仕組み

鎌田: BRING™では、全国の回収拠点で集めた服をプラントに送って糸を作っているのですよね。

岩元:そうです。衣類、プラスチック製品を回収し、自社工場ではポリエステル繊維を再繊維化し、再生ポリエステル“BRING Material™”を作っています。そのほかのコットンやウールなどはパートナー企業さんと協力して再生します。

鎌田:分別は店舗でやるのでしょうか。

岩元:こちらでやります。回収された服は当社が素材ごとに分別して素材に適したリサイクル方法で再生しています。

鎌田:ブランドさんの回収ボックスを設置するハードルが下がりますね。またBRING™では再生された糸を使って洋服を作り、ECサイトで販売もしていらっしゃいますね。再生ポリエステル繊維でできたTシャツのはずですが、コットンのように見えるものもあるなと思いました。

岩元:Tシャツはコットンライクの再生ポリエステル“BRING Material™”100%で作っていて、見た目と着心地は綿100%そっくりなんです。機能はポリエステル100%を活かし、UVカット機能や速乾性も備えています。今までは綿100%で作っていたけれど、再生ポリエステルを採用してみたいという相談もありますよ。BRING™ではサステナブルという点だけではなく糸作りにもこだわって製品を製造しています。お客さんの反応を見て、リサイクルをどんどんファッショナブルな方向に広げていきたいですね。

鎌田:今、ポリエステルは洗濯時にマイクロファイバーが落ちるので環境に悪いと言われていますが、BRING™の再生ポリエステルはマイクロファイバーが抜けにくいそうですね。どういった仕組みなのでしょうか。

岩元:繊維が落ちにくいつむぎ方で作られてるんです。マイクロファイバーについては課題として認識していますので、今後も他社と連携をしながらよりサステナブルな商品開発をしていきたいですね。

鎌田:日本環境設計さんの再生ポリエステルの技術の大きな特徴として、何度もリサイクルできるということがあると思います。1着の洋服をずっとリサイクルし続けられるということなんですよね。

岩元:そうなんです。何度でもリサイクルできるんですよ。ただ、今はリサイクルしたものを商品として販売するには販売価格に課題があります。自社商品は私たちの判断で販売価格を設定できるのでいいのですが、他社のブランドさんに糸を使ってもらう場合だとそうはいきません。そこで、当社の再生ポリエステルBRING Material™を何%混ぜた糸を作れますとブランドさんに提示した上で商品開発をしてもらい、最終的な商品価格を設定しやすくしています。

小出:それはORGABITSと全く同じ発想ですね。まずはブランドさんにちょっとずつでも使ってもらって、生産量を増やせるようにすることが大事ですよね。

鎌田:再生ポリエステルの環境コストに関してはどうなのでしょうか。リサイクルを行うにしても再生するときにCO2が排出されるため、手放しに「リサイクルすればOK」とも言えない状況があると思うのですが、ヴァージンポリエステル(新しいポリエステル)を用いる際に比べて、どのくらい環境インパクトを抑えられるのでしょうか。

岩元:新しいポリエステルを作る場合は、石油を掘削し輸送するところからのエネルギー使用量、CO2排出量を考える必要があります。製造量に左右されるところがありますが、石油由来に比べてCO2の排出量を少なく製造することできると考えています。また、着なくなった服をごみではなく再生原料として回収するので、埋め立てや焼却で生じる温室効果ガスの抑制にも貢献できるんです。

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