INTERVIEW
2020.08.27UP
プラス数十円で世界平和を買おう。古着でデロリアンを走らせた日本環境設計が考える、「ちょっと」の踏み出し方

お声がけをこなすことで生まれた広がり

鎌田:日本環境設計さんは、たとえば日本マクドナルドさんと連携して、ハッピーセットのおもちゃを回収し、それをリサイクルして作った再生原料で高輪ゲートウェイ駅のジオラマを作ったり、アウトドアファッションブランドのスノーピークさんと共同で、再生ポリエステル樹脂を使った商品を販売したりと、さまざまな企業や団体とともに事業を行っていらっしゃいますよね。

小出:マクドナルドさんのイベントは年に3回くらいあって、おもちゃの回収量は100万個を超えたと聞きました。「要らなくなったハッピーセットのおもちゃは回収ボックスへ」という行動が子供たちの間で習慣化していくのはすごいことだなと感じます。文化を作っているのと同じですよね。 鎌田:きっといろいろなところからお声がけがあるのだと思いますが、一緒にやろうと思うのはどういうときですか。

岩元:ありがたいことに、個人からも行政からも企業からも、さまざまなお声がけがあるんです。ダイビングショップから、海洋ゴミを拾ってそれを使った商品開発がしたいとか、音楽会社からコンサートで歌手がファンに環境について啓蒙したいから協力してくれないかとか。不用品の洋服が多すぎて困っているという相談だってあります。技術の売り込みもあるし、リサイクルに回す製品の回収拠点になりたいという申し出もあります。様々なものがありますが、それをとりあえず「こなしていく」ことが大事だと感じています。

鎌田:どうやったら一緒に取り組めるかを考えるということですよね。そのオープンな姿勢を続けていらっしゃるのがすごいですよね。

岩元:環境に関しては、うちには技術や知識が集まっています。連携できるものもあるかもしれないので、相談はすべて目を通して検討するようにしています。そして、いろんなところから話が来ることが情報のインプットにつながります。

鎌田:相談から新しい取り組みが生まれることも多いのでしょうか。

岩元:少なくないですね。入ってくる情報量も多いですし、他社さんとのお付き合いもあってアウトプットができる機会に恵まれていると思います。JALさんと協力して古着を再生したバイオジェット燃料で飛行機を飛ばそうという企画では、全国の皆さんと挑戦できる企画だと楽しみながらリサイクルを考えてもらう機会になると、当社の運営するブランド「BRING™」を通じて約30万着の着られなくなった服を回収したんです。その結果、国内初となるバイオジェット燃料を服から製造できました。当初は参加者のなかから抽選で200名の方を招待して、再生バイオジェット燃料で飛ぶ飛行機に乗ってもらう予定だったんですよ。それは新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったんですけれど。

鎌田:「BRING™」では、服の回収からリサイクル、再生素材を使った洋服の販売まで行っていらっしゃるのですよね。使わなくなった洋服でジェット機が飛ぶ企画を聞いたら、リサイクルに興味がなかった人も参加したくなりそうです。

大事なのは、「お客さんが楽しく取り組めること」

小出:ジェット機の件もそうですが、岩元さん始め日本環境設計さんは、楽しくリサイクルに取り組める企画をたくさん考えていらっしゃいますよね。私もオーガニックコットンの普及をやっていますが、生産者さんに近づけば近づくほど、重い現実が見えてきます。でも、洋服を実際に買う場面を考えると、お客さんにはワクワクドキドキしてもらわないとならない。岩元さんたちはその点が非常に上手だなと感じます。

鎌田:そうですね。環境に関する企画を華やかに楽しそうにエンターテイメント性を高めて行うと、本質とずれてしまうとか、矛盾が生まれてしまうといった懸念も出てきます。でも、日本環境設計さんはみんなが楽しんで参加できる仕組みを作ることに非常に長けていらっしゃいますよね。

岩元:技術的な裏付けや法律的な知識、行政への届出などは当然きっちり考えて実行しますが、消費者に伝わらなかったり行動していただけなかったりしたら意味がない。そこで私たちのキャッチフレーズは「正しいを楽しいに」にしています。

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