INTERVIEW
2022.06.30UP
ちょっとずつポップに。旅する八百屋「青果ミコト屋」がアイスを売りながら伝えたいこと

便利だった仕組みや物も、そこで生まれた価値観も、時代と共に変えていい

鈴木:野菜を仕事にし始めて、思ったのが「これは社会の縮図のようだな」ということ。他と違う子、マイペースな子が弾かれてしまうんですよね。人間社会でも、何か変わったことをやったり言ったりする人は叩かれるでしょう。ミコト屋を始める前からそれは気になっていたんです。

野菜がスーパーで同じ顔をして売られていることを、本当は怖い、気持ち悪いと思っても良いはずです。だって人間がみんな同じ顔をしていたら怖いですし。野菜だって全部きちんと揃っているのは不自然です。A品、B品という優劣はなくて、単なる個性だとみんなが思えば野菜の規格も変わっていく。そうなれば、農薬などの使用も減っていくはずなんですよね。

鎌田:服も同じですが、大量生産型に一気に切り替わった時代があったのですよね。その時点では食べ物が足りなかったり、服が足りなかったりして困っていたはずですから、合理的に作れる方法を開発したのはすばらしいことだったと思います。でももう時代が変わってきて、さまざまな技術があり、個別に届ける方法もあるのに、量産型の仕組みだけにとらわれているのは残念ですよね。在来種の野菜もそうですが、大量に安定的に供給する仕組みに合わないものもあります。それは野菜が悪いわけではないはずです。仕組み自体を新しくする必要もありますよね。

鈴木:そう、大量生産型の恩恵は相当受けてきているし、それはすごいことだったと思います。でも弊害もあるんですよね。そこは変えていかないと。

鎌田:少しずつ変えていきたいものですよね。

八木:ミコト屋さん自体も2010年から少しずつ変化を重ねてこられて、昨年お店ができたわけですが、お店を開いて変わったことはありますか?

鈴木:今まではあちこちに出かけて迎えてもらう立場でしたが、今度は迎える立場になりました。来てくれる人が気持ちよくすごせるにはどうしたらいいかと日々考えています。そのなかで、これも価値観や仕組みの変化の話になりますが、「お金を払った方がエライ」「お客様は神様」みたいな、お金至上主義みたいな価値観は覆していきたいと感じています。

鎌田:たしかに、「お金を払っているんだから」「お金を払っていただいているんだから」と考えてしまいがちですけれど、本来なら関係は対等なはずですよね。

鈴木:すべてを貨幣に変換して考えると、お金至上主義みたいになってしまうんですよね。けれど、それは、果たして本当に幸せなことだろうかと思うんです。ミコト屋では物々交換をしている人もいるんですよ。お店にレジ袋を用意していないんですが、近所のおばちゃんが「あんたんところ、袋がないから」と新聞紙でバッグを作って持ってきてくれるので、お返しに野菜を持っていってもらう、とか。何か提案をしてくれたら、野菜やアイスでお返しするような、物々交換もありにしたいと思っています。

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