INTERVIEW
2023.03.17UP
好きを長く続けるために、完璧を最初から目指さない。ビーガン対応のクッキー屋さんovgo Bakerの考え方

ハードルを高くせず、みんなが手軽に取り組めるように

鎌田:Bコープ認証を取り、環境負荷を考え、ビーガンで、オーガニックや国産のものをなるべく使うようにしている……と聞くとさまざまな配慮があるとわかりますが、ovgoさんのホームページやSNSではこういった説明的なことはあまり打ち出していないのですよね。

溝渕:ビーガンの人にも卵アレルギーの人にも、環境問題を意識している人にも食べてもらえる商品を作っている自負はあるんです。でも、一番届けたい対象は、サステナビリティに関心があるけれど、どこから手をつけてわからない人や、おいしいものが好きで自分が楽しみたい人。チャレンジするハードルを下げたいんですよね。ポップでかわいくておいしいクッキーだと思って食べていて、後でプラントベースのものだったと知るというのもいいなと思います。警戒されずに、まずは一口食べて好きになってもらえるように、ということを重視して、ウェブサイトや販促物には小さく出すようにしています。日本ではまだビーガンの選択肢が少ないので、ビーガンやサステナビリティに関心がある人は、そのぐらいでも気づいてくれますし。

八木:オーガニックコットンを扱う作り手の立場からすると、ついオーガニックコットンの良さを伝えたくなってしまうのですが、自分の取り組みの良さは言いたくはならないんですか?

溝渕:大切にしている価値観ですし、スタッフがovgoの価値観に合うことを思いついたらそのチャレンジを後押しできるようにしたいので、社内に対しては強調して伝えています。なので、最初はそこまで環境意識を持って働き始めたわけではないスタッフにも、それは伝わっているはずです。でもお客さんには自然な感じで接客を通じて伝えていければいいのかなと思っています。ただ、この3年で「ポップでおいしいクッキー」としては認知されてきたから、2023年からは環境を意識するための次の一歩を後押しできるような、とっかかりを作っていきたいですね。自分達のことを「こんな良いことをしています」というのはovgoらしくないと感じるので、Bコープのことを紹介したり、プラントベースやビーガンのお店とコラボイベントをしたりするような方法がとれたら良いなと考えています。

八木:クッキーは「おいしいクッキーだなと思ったらプラントベースで環境に良かった」ということが起こりやすいですよね。オーガニックコットンの場合でも、「デザインが気に入って、買ったらオーガニックコットンだった」というパターンもあるのでしょうけれど、オーガニックコットンの表示に決まりがないこともあって、気づかれないかもしれないという悩みもあります。オーガニックコットンの場合は、「プラントベースのクッキーはコレステロール値が低い」というような、自分目線のメリットもないんですよね。その選択は100%、環境や働く人にいい、ということのみです。でも、だからこそ余計に、楽しそうな取り組みとともに紹介するのは大事だなと思うのですが……。

溝渕:私は今30歳なのですが、20代前半のスタッフなど、若い世代の方が環境など社会課題の解決に関心が高いと思います。もちろん、私に見えているのはovgoに関心がある人たちなので、公平な視点とは言えませんが、周りの30代以上の人たちは立派なことは言っていても行動が伴わない人もいます。若い人の方が自然に理解していて、2つ似た商品が並んでいて、多少の値段の違いなら、環境や社会、働く人に良い方を選ぶと思うんですよね。

八木:希望の持てる言葉です。ovgoさんの今後の発信や挑戦を、楽しみにしています!

鎌田:今日はすてきなお話、ありがとうございました。またクッキーやマフィンを買いに行きます!

GUEST
溝渕由樹株式会社ovgo 代表取締役
慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、三井物産株式会社に新卒で入社。退社後、“食”起点での環境問題への取り組みを学ぶためブラジル・アメリカなどでの現地調査、DEAN&DELUCAでの勤務を経て、2020年に「環境や動物、あらゆる人々と、未来にとってやさしい食の選択肢を楽しく提供する」ことをミッションとするovgoを創業。全て植物性、かつできる限りオーガニック、国産の食材を使った焼き菓子を製造・販売するヴィーガンベイクショップ「ovgo Baker」を展開。現在、東京・日本橋や京都、軽井沢、ラフォーレ原宿などで6店舗を運営する。2023年にB Corp認証を日本では16社目に取得。国内の飲食店での取得は初となる。
https://ovgobaker.com
INTERVIEWER
鎌田 安里紗
「多様性のある健康的なファッション産業に」をビジョンに掲げる一般社団法人unistepsの共同代表をつとめ、衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く展開。種から綿を育てて服をつくる「服のたね」、衣食住やものづくりについて探究するオンラインコミュニティ「Little Life Lab」など。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。
Instagram: arisa_kamada
INTERVIEWER
八木修介
豊島株式会社営業企画室所属、ORGABITSディレクター。1992年生まれ、神奈川県川崎市出身。慶應義塾大学文学部を卒業後2015年に豊島に入社。人事部にて2年間新卒採用担当として採用面接や企業説明会に従事。その後営業部署に異動し、ワーキングアパレル領域の営業を担当。生産管理で中国やASEANの奥地に入り込み、ピーク時には年間100日ほど海外出張。その後2019年から現部署にてオーガニックコットンを中心としたサステナブル素材を担当。物心ついた頃からの趣味はサッカー。
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