ハードルを高くせず、みんなが手軽に取り組めるように
鎌田:Bコープ認証を取り、環境負荷を考え、ビーガンで、オーガニックや国産のものをなるべく使うようにしている……と聞くとさまざまな配慮があるとわかりますが、ovgoさんのホームページやSNSではこういった説明的なことはあまり打ち出していないのですよね。

溝渕:ビーガンの人にも卵アレルギーの人にも、環境問題を意識している人にも食べてもらえる商品を作っている自負はあるんです。でも、一番届けたい対象は、サステナビリティに関心があるけれど、どこから手をつけてわからない人や、おいしいものが好きで自分が楽しみたい人。チャレンジするハードルを下げたいんですよね。ポップでかわいくておいしいクッキーだと思って食べていて、後でプラントベースのものだったと知るというのもいいなと思います。警戒されずに、まずは一口食べて好きになってもらえるように、ということを重視して、ウェブサイトや販促物には小さく出すようにしています。日本ではまだビーガンの選択肢が少ないので、ビーガンやサステナビリティに関心がある人は、そのぐらいでも気づいてくれますし。
八木:オーガニックコットンを扱う作り手の立場からすると、ついオーガニックコットンの良さを伝えたくなってしまうのですが、自分の取り組みの良さは言いたくはならないんですか?
溝渕:大切にしている価値観ですし、スタッフがovgoの価値観に合うことを思いついたらそのチャレンジを後押しできるようにしたいので、社内に対しては強調して伝えています。なので、最初はそこまで環境意識を持って働き始めたわけではないスタッフにも、それは伝わっているはずです。でもお客さんには自然な感じで接客を通じて伝えていければいいのかなと思っています。ただ、この3年で「ポップでおいしいクッキー」としては認知されてきたから、2023年からは環境を意識するための次の一歩を後押しできるような、とっかかりを作っていきたいですね。自分達のことを「こんな良いことをしています」というのはovgoらしくないと感じるので、Bコープのことを紹介したり、プラントベースやビーガンのお店とコラボイベントをしたりするような方法がとれたら良いなと考えています。
八木:クッキーは「おいしいクッキーだなと思ったらプラントベースで環境に良かった」ということが起こりやすいですよね。オーガニックコットンの場合でも、「デザインが気に入って、買ったらオーガニックコットンだった」というパターンもあるのでしょうけれど、オーガニックコットンの表示に決まりがないこともあって、気づかれないかもしれないという悩みもあります。オーガニックコットンの場合は、「プラントベースのクッキーはコレステロール値が低い」というような、自分目線のメリットもないんですよね。その選択は100%、環境や働く人にいい、ということのみです。でも、だからこそ余計に、楽しそうな取り組みとともに紹介するのは大事だなと思うのですが……。
溝渕:私は今30歳なのですが、20代前半のスタッフなど、若い世代の方が環境など社会課題の解決に関心が高いと思います。もちろん、私に見えているのはovgoに関心がある人たちなので、公平な視点とは言えませんが、周りの30代以上の人たちは立派なことは言っていても行動が伴わない人もいます。若い人の方が自然に理解していて、2つ似た商品が並んでいて、多少の値段の違いなら、環境や社会、働く人に良い方を選ぶと思うんですよね。


八木:希望の持てる言葉です。ovgoさんの今後の発信や挑戦を、楽しみにしています!
鎌田:今日はすてきなお話、ありがとうございました。またクッキーやマフィンを買いに行きます!

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