INTERVIEW
2021.08.25UP
サステナブルのその先へ。鎌田安里紗さんの重視する「多彩性」。

Bits magazineは、ORGABITSの入り口

小出:ORGABITSでは昨年8月から、鎌田さんのご提案でWEBマガジン「Bits magazine(ビッツマガジン)」を始めました。日本環境設計株式会社 取締役会長の岩元美智彦さん、「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役の山田敏夫さん、株式会社ヘラルボニーの代表取締役社長 松田崇弥さんと、チーフ・クリエイティブ・オフィサーの佐々木春樹さん、それから特定非営利活動法人ジャパンハートの吉岡秀人先生、料理家SHIORIさんと、さまざまな方にお話をお聞かせいただきましたね。

鎌田:ORGABITSの「Bits(ちょっと)」を大切にする思想を受けて、今、社会的な取り組みをなさる方々が最初は小さな気づきを大切にして事業を始めたというお話や、ORGABITSの寄付先の団体さんの熱い思いをお聞きしていて、毎回、本当におもしろいですよね。ORGABITSを立ち上げた豊島の溝口さんと、小出さんのお話も、ORGABITSの思想や展望をお聞きしたのも興味深かったです。

私は常に自分の考え方を更新したいのですが、インタビューアーやファシリテーターのお仕事は自分の考えを話しながらお話を聞けるので、自分が生まれ変わるように感じてとても好きなんです。当日までに取材先の方の書籍や記事をできるだけ読んで臨むのですが、インタビュー中にその方の新しい側面が見えてくるとわくわくします。

小出:毎回、インタビュー時にはかなり準備されているのを感じます。だからこそ、鎌田さんの質問にはハッとさせられますし、そこから広がるお相手の話もおもしろいですね。

鎌田:もともとつながりのあった方にインタビューすることもありましたが、改めてお話を聞くことで発見があったり、雑談では聞けなかったことが聞けたりして楽しいですね。ジャパンハートの吉岡先生のようにORGABITSでのご縁がなければお話が聞けなかった方もいらっしゃいますし。記事はバズを目的にはしておらず、長めでずっしりしたものばかりですが、読んでくれた人の反応を見ると、深く共感してくれていると感じます。

小出:そうですね。自分も取材をしている立場なのに、何度読んでも取材先の方々の思想がすばらしくて読み入ってしまいます。

鎌田:何年後かに読んでも、たぶん同じように感じるのではないでしょうか。2005年からじっくりと育まれてきたORGABITSらしいマガジンになっていますよね。ORGABITSへの入り口として、ああいった記事がオンライン上にあるのはいいなと感じます。

ORGABITSを、思想を深める場所に

小出:今、鎌田さんはビッツマガジンを非常に熱心に作ってくださっていますが、鎌田さんが今後、ORGABITSに期待することはどんなことでしょうか。

鎌田:今、気になっていることは「ファッションの多様性」です。ファッション産業に多様性をもたらす上で、ORGABITSは良いハブになれると思います。オーガニックコットンを媒介に、いろいろな寄付先があったり、もの作りをしている団体さんや企業さんとつながったりしていますから。

先ほどお伝えした「多様性のある健康的なファッション産業に。」をビジョンにした一般社団法人unistepsで以前に、「国連生物多様性の10年市民ネットワーク​」代表の坂田昌子さんのお話を伺ったことがあります。その方が、生物多様性というと、日本では理系の、環境的なキーワードとして考えられているけれど、ある生物が絶滅すれば、それを食べる文化、使う文化、語る文化も消滅して、わたしたちの文化の多様性も失われていくという話をしてくださったんです。わかりやすい例でいうと、ミツバチが絶滅したら、それはミツバチだけの話ではなく、蜂蜜を食べる文化、世界のミツバチの受粉に頼った農業も壊れてしまうことを意味します。つまり、多様性を大事にすることは、人の暮らしを守ることなんですよね。同じことがファッションにもいえると思うんです。

小出:Bits magazineの取材をしていても思うのですが、「Bits」、ちょっとずつという思想には普遍性がありますから、いろいろな団体や企業さんともつながれるんですよね。ハブになれると言うのはその通りですね。

鎌田:Bits magazineに登場してくださった料理家のSHIORIちゃんは、ORGABITSチームと一緒に、ご自身の8000名の生徒さんたちがいるオンラインコミュニティの限定エコバックを作ろうとしていますよね。そのバッグがあれば、オンラインでしか繋がっていない人たちがスーパーで「あ、あの人もSHIORIさんのレッスンを受けている人だ!」と出会えるかもしれないから、と。それを聞いて「そうか、物ってそういう役割もできるんだな」と感じました。物には思想を纏えたり、思想を強固にしたり、同じ思想に共感する人と繋がれたりする。そしてその思想を乗せる土台の素材としてORGABITSがあるのは、すごいことだなと思いました。

小出:物でないとできないことを、今一度考えさせられますね。。

鎌田:そうなんです。それから価値基準が事業規模や売り上げではない企業さんに光を当てることも、ORGABITSならできそうです。たとえば先日、Sghr(スガハラ)のブランドで知られる菅原工芸硝子株式会社 社長の菅原裕輔さんにお話を伺う機会があったのですが、スガハラは創業してから一貫して、手仕事によるガラス製造にこだわってきて、現在でも職人さんたちが工房で作っていらっしゃるそうなんです。それは経済合理性から考えれば考えられないこと。それでも続けているのは、工房のある千葉で、作り手と使い手の距離を近くし、コミュニケーションをしながらもの作りをすることに、会社の存在意義を感じているからだそうなんです。その話を聞いて、すっかりファンになりました。

こういった、哲学のあるすてきな企業さんをORGABITSが紹介していけば、ORGABITSを通じて商品との新しい出会いを得られて、購入なさる方もいるかもしれません。紹介をきっかけにORGABITSの思想に共感してくれる人同士で何かコラボレーションが生まれる可能性もあります。すばらしい団体さんを紹介すれば、寄付が集まる可能性もあります。すてきな企業さん、取り組みに触れられる接点にORGABITSがなっていったらいいなと思います。また、ORGABITSの取り組みやBits magazineを知ることで、思想を深められるような、そういう存在になったらいいですね。

小出:すばらしいアイデアですね。引き続き、ORGABITSを一緒に盛り上げていただければと思います。どうぞよろしくお願いします!

Text: フェリックス清香
Photograph: Martineye(Instagram: dennoooch)

GUEST
鎌田 安里紗
「多様性のある健康的なファッション産業に」をビジョンに掲げる一般社団法人unistepsの共同代表をつとめ、衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く展開。種から綿を育てて服をつくる「服のたね」、衣食住やものづくりについて探究するオンラインコミュニティ「Little Life Lab」など。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。
Instagram: arisa_kamada
INTERVIEWER
小出 大二朗
豊島株式会社営業企画室所属、ORGABITSプロデューサー。1966年1月神奈川県茅ヶ崎市生まれ。1989年立教大学経済学部卒業後、株式会社三陽商会に入社。営業、企画マーチャンダイザーを経験後、企画責任者を経て、英国ライセンスブランドのメンズ総責任者を担当。その後、米国ライセンスブランドの事業責任者、マーケティング部門の責任者とあらゆる職務を経験。2017年豊島株式会社入社後、出資会社の副社長を経て現職。
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