2022.06.02
コラム
「ジュエリーの光と闇」

読者の方が今よりもちょっとだけサステナブルなマインドで日々を送る手助けをするBits&Tipsコラム、今回はエシカルジュエリーについてです。

早速ですが、アクセサリーとジュエリーの意味の違いはご存知ですか?「そういえば同じような意味で使っていた」という方が多いかもしれませんね。

ジュエリーは金銀プラチナなどの地金や天然の宝石など希少価値の高い素材を使ったもの、アクセサリーはそれに限らず真鍮や貝などのいろいろな素材を使ったもののことを呼びます。そのため価格は基本的にジュエリーが高価、アクセサリーは手が届きやすいことが多いですね。

アクセサリーとジュエリーの違いがわかったところで、このコラムでは、主に金や宝石を使ったジュエリーについてのお話をしたいと思います。

 

希少な素材を使いお値段もそこそこするジュエリー。婚約指輪や結婚指輪をはじめ、特別な時に手に入れたり贈ったりしますね。

10年ほど前から「エシカルジュエリー」という言葉を聞くようになりました。自然環境や社会への配慮のあるジュエリーという意味ですが、人生の節目で触れるから、そして将来受け継がれる可能性もあるからこそ、今の自分の生き方や大切にしたいことを反映させたものを選びたいと考え、ジュエリーをエシカル基準で選ぶ方も多いようです。

それでは早速、ジュエリーの「ライフサイクル」、つまり原料から廃棄までの一生の中で、どこがエシカル的に重要ポイントになるのかを見ていきましょう。

ジュエリーの大まかな一生のうち人間が関わるところとしては、金銀宝石などの鉱物の採掘、精製、製造、流通、使用、廃棄となります。その中で一番自然環境や社会、人権にとってインパクトが断然大きいのが採掘の場面です。

ゴールドの採掘場では、危険を伴う労働環境の中、世界で約2千万人もの人が働いています。世界50カ国以上の鉱山で、児童労働や強制労働、また化学物質の危険な取り扱いによる健康被害や環境汚染などが報告されています。

また、ゴールドやダイヤモンドなどは内戦地域から産出され、その収益が内戦の財源になっていることがあります。1990年代後半からアフリカの幾つかの地域で、資金に困った反政府組織がダイヤモンド鉱山を武力で占拠し、地域住民を酷使して生産されたダイヤモンドを資金源とする例が見られました。そうして、非合法に取引されたダイヤモンド原石の収益は兵器の購入に充てられるなど、紛争を長期化や深刻化させる要因のひとつでした。

煌めくジュエリーのことを考えていたら、急に児童労働や紛争の話になってびっくりしますよね・・・。闇が深い。美しいジュエリーの背景にこんなドロドロはいらない!と立ち上がったのが数々の認証制度です。

例えば、公正な労働環境の下、採掘されたゴールドに対するフェアマインド認証。
この認証団体は、金採掘現場における労働者の人権保護、紛争の予防、またコミュニティ全体の持続的な発展をサポートしています。

そして、責任あるジュエリー協議会 RJC(Responsible Jewelry Council) 認証。RJCは2005年に、世界を代表する有名ジュエリー企業及び団体14社が中心となって設立された国際的非営利団体です。ダイヤモンド・ゴールド・プラチナなどを取り扱う宝飾業界を対象に、取引の透明性や環境・倫理面の取り組みに対して基準を設けています。

また、ダイヤモンド業界は国連や各国政府の協力のもと、2000年にアフリカのキンバリーにて対策会議をひらき、内戦の財源として使用されるダイヤモンドを排除する取り決め「キンバリー・プロセス証明制度」を確立しました。この制度は、加盟国を経由するすべてのダイヤモンドの原石が“紛争に関わらない”ことを証明する国際認証制度です。輸出の際に不正には開封できない容器の使用を義務づけ、また紛争と関係のない地域から供給されていることを示す原産地証明書(キンバリープロセス証明書)が添えられます。

地中から機械や労働力や薬剤を使って鉱物を取り出す作業は、想像しただけでも過酷そうなイメージがありますが、私たちが現場を直接確認するのは至難の業というかほぼ不可能。そういう時に認証があると選ぶ基準になりますね。

 

以上は「よりよく採掘された」鉱物を目指すためのもの。では、そもそも地中から取り出さずに、既に地上に出ている鉱物を回していくにはどういった選択肢があるのでしょうか?

例えば、リサイクルゴールドやプラチナの使用です。
金銀、プラチナ、パラジウムなどは、リサイクルの技術が発展しているため、環境負荷をあまりかけずにリサイクルすることができます。新しく鉱山で採掘し輸入するよりリサイクルの方が、環境負荷が少ないことが実証されています。

ジュエリー業界に携わる友人の話では、実際ゴールドやプラチナなどは日常的にリサイクルされているそうです。そりゃ、そうですよね。だって今、金1グラムが8500円超え(2022年5月)。無駄にするには高級すぎる。加工の際に粉状になったものまで回収し、新たな製品の原料になります。使われなくなって売られたジュエリーはもちろん、企画段階で作られるサンプルも「これ、ドロップ(製品化されないこと)だから溶かしといてね」と循環しているそう。経済合理性を考えたら当たり前ですね。

昔から当たり前だったことを、近年のサステナビリティへの流れに乗って新たなアピールポイントとするかは業者によって考え方の違いはあるようですが、ゴールドやプラチナに関してはリサイクル文化が根付いているようです。

また、近年、都市鉱山という言葉が出てきています。
都市でゴミとして大量に廃棄される家電製品の中に存在する有用な鉱物などの資源を鉱山に見立てたもので、そこから資源を再生し、有効活用しようというリサイクルの一環です。
都市鉱山という観点から見ると、日本は世界有数の資源大国といわれています。

 

ということで、ジュエリーをよりエシカルにするキーポイントは「持続可能な採掘」と、「地上資源の循環」にあると言えます。一生大切にしたい特別なジュエリーを新たに迎えるときには、ブランドが公表している情報を集めたり、わからなければ思い切って質問してみてくださいね。

 

Illustration by Luis Mendo

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