INTERVIEW
2020.08.27UP
小さな幸せの積み重ねが変えていく。「語れるもので、日々を豊かに。」を掲げるファクトリエ流、変化の起こし方

「ORGABITS(オーガビッツ)​」は、みんなで“ちょっと(bits)ずつ”地球環境や生産者に貢献しようという想いから2005年に始まったオーガニックコットン普及プロジェクト。そこから生まれた「BITS MAGAZINE~ちょっといいことしてるヒト。~」では、ORGABITSチームによる「ちょっといいこと」を実践し続けている方々へのインタビュー記事を掲載していきます。
3本目の記事のゲストはファッションブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役の山田敏夫さん。ファクトリエは、日本全国の熱い志を持った工場と「語れる洋服」を作り、インターネットを通して販売しています。
小さな幸せを積み重ねることによって変化が起きたと話す山田さんに、今考えていることを聞きました。
聞き手は、ORGABITSアンバサダーの鎌田安里紗さんと、ORGABITSプロデューサーの小出大二朗です。

ファクトリエの「作り手との距離の近さ」による楽しさ

鎌田安里紗さん(ORGABITSアンバサダー/以下、敬称略):ファクトリエは2012年にスタートしたブランドで、日本国内の工場とともに「語れる」商品を作り、インターネットを通して販売していらっしゃいますよね。商品のページに作り手の工場の思いや写真が載っているのがすてきだなと思います。

山田敏夫さん(ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役/以下、敬称略):そうなんです。全商品のネームにも工場名をつけています。

鎌田:洋服作りでは、ブランドと工場の間にたくさんの中間業者がいるのが一般的ですよね。いろんな人の仕事が積み重なって1着の服ができること自体は、私は魅力だと感じています。ただ、あまりにたくさんの方が関わっているために、生産過程で問題が起きてしまったり、生産背景をオープンにしにくかったりしますよね。でも、自分が買う洋服の背景を知りたい人も多いと思うんです。ファクトリエはその願いを叶えてくれた。作り手と買う人の距離がぐっと縮まりましたよね。

山田:そうですね。買った人が誰かに語りたくなるような商品を作りたいと思ったので、作り手の工場と直接仕事をするのが手っ取り早かったんです。同時に「この工場のものだから買う」と、工場の名前で買うような商品が生まれ、そういう文化が生まれたら良いなとも思っていました。

鎌田:工場ツアーや、購入者が工場にメッセージを送れる仕組みもありますよね。「作り手の方とやりとりができてうれしい」と喜んでいらっしゃる方の投稿をSNSで見かけました。

山田:そうなんです。工場ツアーとして毎月どこかの工場に集合してもらって、工場で働く人々とお客さんが直接話す機会を作っていました。ただ、新型コロナウイルスの影響で2020年2月からツアーをしにくくなったので、お客さんがマイページから「いいね」ボタンとメッセージを送れるようにしました。

フランスで感じた小さな疑問と気づき

鎌田:「工場の名前で商品を買うような文化が生まれたらいいな」という発想はどこから生まれたのでしょうか。

山田:フランスに行った時に、「グッチは工房として創業した」と知ったんです。ヴィトンも元々は工房ですよね。日本もイタリアやフランスと同じようにモノづくりの伝統があったはずなのに、なぜ日本にはグッチやヴィトンのようなブランドがないのだろう、と思いました。それどころか、日本ではモノづくりの現場がどんどん海外に移っています。だからこそ、名前を聞いたら買いたくなるような工場が日本からどんどん生まれれば良いなと感じました。

またフランスのシャンパーニュ地方に行った時には、日本の生産者全体が置かれている環境にも疑問を持ちました。なぜなら、そこで知った生産者の姿が、日本の生産者と大きく違ったからです。シャンパーニュ地方にあるエペルネという街はのどかで葡萄畑がたくさんあるところなのですが、住民の平均所得がフランスで最も高いんですよ。なぜだろうと疑問に思ったのですが、その理由はモエ・シャンドン社をはじめ、名だたるシャンパン・メーカーがあるからだったんです。

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