2021.02.12
その他
徳之島レポート~その1~

社会起業家ジョン・ムーアさんの“笑顔になれる暮らしのヒント”をご紹介します。
近年、生物の多様性が失われるスピードが加速しています。危機的状況から未来へ種を残す、徳之島の活動についてお話します。

目次
1. この記事の監修:ジョン・ムーアさん
2. 地元の種を集め、次世代へとつなぐ
2-1.ジョンさんからの一言

1.この記事の監修:ジョン・ムーアさん

社会起業家、ORGABITSアンバサダー。英国公認教師、オーガニックフード・ガーデニング教師。英国シェフィールド大学卒業後、教師を経て、電通に入社。その後、パタゴニア日本支社長などを歴任。現在は一般社団法人シーズ オブ ライフ代表理事として活動中。

2. 地元の種を集め、次世代へとつなぐ

鹿児島空港から飛行機で約1時間ほどで到着する徳之島。島の周りをサンゴ礁が囲む青く美しい海は、世界有数のダイビングスポットです。徳之島は「東洋のガラパゴス」と言われる奄美群島の一つで、独自の生態系が残っています。しかし、この自然豊かな島でも、生物の多様性は失われようとしています。

それは種子の多様性です。徳之島の人口は約2万5千人。島民の多くは農業で生計を立てています。それなのに、なぜ多様性が失われてしまうのでしょうか? 実は、ほとんどの農家は同じ種類のさとうきびとジャガイモだけを栽培していて、単一作物の畑が島の大部分を占めています。

かつては、食料を自給自足するのが当たり前で、徳之島では「アタイ」と呼ばれる自家菜園で、各家庭ごとに多種多様な作物を育てていました。

しかし、近代の工業的な農業と中央集約型のフードシステムにより、「商品」としての農作物を育てるように。種は、自分たちで採るものではなく、買うものへと変わり、多くの食料を島外から購入するようになりました。このような大きな時代の流れにより、地元で引き継がれてきた種は、姿を消そうとしています。

そこで、もう一度島の食サイクルを持続可能なものにするために、私は地元の方々と「ローカルシードライブラリー」=「地元の種の図書館」を作ることにしました。徳之島の種を集め、畑で育て、種を採取し、次世代へとつないでいく仕組みです。

まずは、地元に残された種を探すところから始まります。現在では、地元で引き継がれてきた種の多くは、商業的に栽培されていないため、現役の農家さんではなく、おじいさん、おばあさんが家族のために育てているケースがほとんどです。

私は、地元の人の情報を頼りに「アタイ」で種をつなぐ人を探すことに。なかなか見つかりませんでしたが、幾日か聞き込みを重ね、ようやく地元の種をつないでいる人に出会うことができました。ここで私は、種だけでなく、素晴らしい島の文化に出会うことになるのです。その話は次回お話ししましょう。

2-1. ジョンさんからの一言

取材・文/坂田奈菜子
(からだにいいこと2019年3月号より)

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