社会起業家ジョン・ムーアさんの“笑顔になれる暮らしのヒント”をご紹介します。
「ニューカレドニア」でのレポート2回目は、原住民の村での印象的なエピソードです。
目次
1. この記事の監修:ジョン・ムーアさん
2. 出会いと感動にあふれたニューカレドニアの旅
2-1.ジョンさんからの一言
1.この記事の監修:ジョン・ムーアさん
社会起業家、ORGABITSアンバサダー。英国公認教師、オーガニックフード・ガーデニング教師。英国シェフィールド大学卒業後、教師を経て、電通に入社。その後、パタゴニア日本支社長などを歴任。現在は一般社団法人シーズ オブ ライフ代表理事として活動中。
2. 出会いと感動にあふれたニューカレドニアの旅
数年前、初めて訪れたニューカレドニア。それは、現地に住む日本人女性からの1通のメールから始まりました。
彼女から「種のセミナー」を依頼された私は、島のあちこちでワークショップを開催しました。地元の種を守る重要性を説くうちに話がふくらみ、地元同士で種の交換会を実施することに。伝統的な農業を営んでいる原住民の村を訪ねました。ニューカレドニア北部の山奥にある彼らの村に着くと、村の農業のリーダーである村長夫人が畑へ案内してくれました。
ニューカレドニアは酸性の土壌のため、作物が育ちにくい環境です。しかし、彼女の畑には様々な野菜やフルーツが実っていました。しかも、オーガニックで。その秘密は、バナナの木に隠されていました。彼らは、畑を作る土地で、まずバナナの木を栽培します。バナナの木を植えることで、土壌のpHが最適化されるのです。
実際に計測してみたところ、バナナを植えていない場所では平均pH(7より小さいと酸性)くらいでしたが、バナナを植えたところではpHは7(中性)まで中和されていました。彼らはpHについての知識も測る機材も持っていませんが、古くから伝わる知恵として、その農法が伝承されてきたのです。
その夜、彼らは畑で採れた野菜で食事を作り、芋から作ったお酒で私たちをもてなしてくれました。楽しいパーティーから一夜が明け、私はセミナーと、種の交換会を行いました。そして、いよいよお別れの時。村長は私に2本の木の苗をプレゼントしてくれました。「ジョンが帰る遠い国で、この木を植えてください。そうすれば、私たちは同じ土の上を歩くことができます。私たちはずっと一緒です」。私の目からは涙が溢れました。
数々の出会いと感動の渦に巻き込まれたニューカレドニアの旅。今も現地の友人たちは、未来への種をまき続けています。そして私の心には、村長から贈られた木が深く根を張り、私を支えてくれています。1通のメールから起こったスパイラルは、これからも続いていくことでしょう。
2-1. ジョンさんからの一言
取材・文/坂田奈菜子
(からだにいいこと2018年10月号より)