2022.03.16
コラム
「レザーとファーとサステナビリティをめぐる、モヤモヤの交通整理」

サステナブルファッションまわりのトピックを考えるきっかけを提供するBits&Tipsコラム、今回はレザーやファーのお話です。レザーとは、牛革、豚革、羊革など動物の皮をなめして耐久性をあげた素材、ファーとは、動物の毛皮を同じくなめした素材です。

執筆にあたって考えていたときに感じたのが、売り場は同じだったりするのに、コットンなど主に服に使われる生地と、本革のバッグやシューズ、財布やコートに主に使われるレザーやファーは背景も成り立ちも異世界だなぁ、ということ。

コットンのことを考えるとき、大抵頭の中には一面に広がるコットン畑やそこで働く人、糸を紡いだり染色したりする工場・・・なんて多少牧歌的な光景がはじめに浮かびます。それがレザーやファーになった瞬間、頭の中の景色に牛やら豚やらウサギさんがどしどしと押し寄せてきて、途端に生々しい命を感じます。当たり前かもしれませんが、レザーやファーは生きた動物由来です。また、毛を刈ってライフゴーズオンな羊のウールと違い、レザーとファーは動物に命を提供してもらわないと取れません。

レザーやファーをめぐるサステナビリティの論点は代表的なところだけでも沢山あり、それがアニマルライツなど倫理面の議論だったりするので善悪白黒つけがたく、少しややこしくなっていると思います。ここでは、代表的な論点を交通整理できればと思います。

まずレザーについて。(レザーとファーとではまた状況が異なるので分けますね。)

食肉の副産物であることが多いレザー(*1)ですが、畜産業では過度な放牧による土壌劣化や水質汚染、牛のゲップに含まれるメタンによる温室効果ガス排出などが大きな環境負荷となっていますし、「皮」を「革」にするなめし工程ではクロムなどの重金属が使われることがあり、自然環境や生産者への悪影響が懸念されています。また、動物の命を犠牲にすることで装うことに嫌悪感を感じる感覚を持つ人もいます。

しかし、どちらにせよ食肉として殺されてしまった命、皮も有効活用することが環境や命へのリスペクトだという考えもありますし、比較的すぐに劣化してしまう合皮とは異なり、耐久性があり長く使えることが特徴の本革製品は、どんどん買い替えなくても良いという意味ではサステナブルでもあります。また、一部では里山などで鹿などの動物が増えすぎた場合、生態系のバランスを保つために駆除(間引き)をし、その駆除された命を有効活用するために肉や皮を利用することもあります。それから、これは哲学的な話になるのですが(その名も「肉食の哲学」(*2)という本から)、人間も動物の一種であり、捕食活動は自然な循環のうちである。人間だけが他を捕食・利用しないと考えるのは逆に人間を動物界から特別視した思想である、なんて考え方も。

とはいえ、環境への負荷が大きい産業には変わりないため、解決策としては、クロムなめしに代わるベジタブルタンニンなめしや、そもそも動物の皮を使用しない代替レザーが注目を集めています。

代替レザーの注目株はエルメスが投資する、米マイコワークス社のきのこレザー。菌糸を応用した技術で見た目よし、耐久性に至っては本物のレザーに勝るとも。まだ価格が高くはありますが、将来市場とのバランスで価格が下がり普及することも考えられますね。他にはマンゴーやパイナップルからできた代替レザーもあるそうです。(ちなみに匂いは特にしないらしいです。ちょっと残念。)

代替レザーは良さそうですが、では食肉消費で出てしまう皮はどうするの?代替レザーを推進するならば肉を食べない菜食主義も同時に進めないと意味がないのでは?という疑問はさておき、ファーに行きます!

ファーについて。

ファーについては、レザー同様なめしで使われる薬剤の環境負荷が心配されることがありますが、主な問題は倫理的なところと言って問題ないと思います。肉や骨が活用されることはあれど、主に毛皮目的で、場合によっては劣悪な環境で動物を育て殺すことが許されるのか?とても難しい問題です。

一方、毛皮は合成繊維と違って生分解される究極の自然素材である上、親から子へ何世代も大切に受け継がれていくことが多いアイテム。さらに近年「ウェルファー(WelFur)」や「ファーマーク(Furmark®)」といった認証を受け、環境負荷とアニマルライツが適切にコントロールされ、トレーサビリティが担保された商品を選ぶことも可能です。

とはいえ、ファッション業界ではファーフリー(今後ファーを使用しないこと)を宣言するブランドが増えてきています。先駆者であるステラ・マッカートニーをはじめ、アルマーニ、グッチ、バーバリー、サンローランやバレンシアガなどを擁するケリングなどのハイブランド、日本ではスナイデルやフレイ アイディーなどを擁するマッシュホールディングスが宣言をすることで、「毛皮は過去のもの」になりつつある雰囲気をビシビシと感じます。実際、今時リアルファーの製品を出すことは炎上しかねないリスクであるとの認識が広がりつつあります。

「毛皮は過去のもの」と書きましたが、フェイクファー(エコファーと呼ばれることがありますが、誤解を招く表現だと思っています)は健在です。アニマルライツの問題がなく色の表現も多彩なフェイクファー、石油由来のポリエステル素材が主なためマイクロプラスチックの問題はありますが、それを解決する生分解性フェイクファーなどもあるようです。

ということで、ファーやレザーにおいて1つの正解はありません。

ただ、サステナビリティの観点から2つだけ言えることは、どこでどのような環境・状態で作られたものなのかというトレーサビリティは確保されていた方が◯、そしてどんなものでも過剰消費は×。

その上で、この多様な論点の中であなたの心が一番ドキドキしたところはどこでしょう?それぞれの価値観にダイブして、ファー、レザー、持つ?持たない?持つ場合の条件は?自分なりの選択をしてみてください。

他のファッション製品と同じく、ファーやレザーを手に取る時もその素材の背景をできる範囲で想像して、アイテムへの愛に変えていきたいですね。

*1 ファッションアイテムになる動物は、中身が捨てられているって本当? マリエの「私の33年目のサステナブル」Vol.46

*2 「肉食の哲学」ドミニク・レステル 訳者:大辻都

Illustration by Luis Mendo

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