社会起業家ジョン・ムーアさんの“笑顔になれる暮らしのヒント”をご紹介します。
新しい年が始まりました。この機会にあらためて人や植物を「育てる」ことについて、自然の営みから見つめ直してみましょう。
目次
1. この記事の監修:ジョン・ムーアさん
2.「育てる」ことは、制御することではない
2-1. ジョンさんからの一言
1.この記事の監修:ジョン・ムーアさん
社会起業家、ORGABITSアンバサダー。英国公認教師、オーガニックフード・ガーデニング教師。英国シェフィールド大学卒業後、教師を経て、電通に入社。その後、パタゴニア日本支社長などを歴任。現在は一般社団法人シーズ オブ ライフ代表理事として活動中。
2. 「育てる」ことは、制御することではない
もうしばらくすると、春がやってきます。土壌から、植物の芽が元気よく顔を出すのを見て、「いつの間に?」そんな風に思ったことはありませんか? 彼らは冬の間、眠っていたのでしょうか?
そうではありません。種は土の中でその時をじっと待っていたのです。月の満ち欠けのサイクルに合わせて、最高の太陽、最高の雨、最高の土壌・栄養が揃った時が来るのを。そして見事なベストタイミングで生命力を爆発させ、光に向かってぐんぐんと成長していきます。
あの小さな小さな種の、どこにこの素晴らしい知恵が隠されているのでしょうか? 種から種へと受け継がれた情報は、DNAの中にインプットされています。
そして、その土地に根付いている土壌微生物に包まれた種は、お互いの命を支え合う共生関係者として、一緒に次の生命を育んでいきます。
本当の「育てる」とは、どういう行為なのか? 私たちには野菜を栽培したり、子どもたちを教育したり、会社で後輩を指導したり、「育てる」という役目があります。
その時、どんな方法を選択していますか? 誰かのために良いこと? おいしいから? 自分のため? 遺伝子に従って? もともと「種」にある可能性を育てるのではなく、自分の都合でコントロールしていないでしょうか。
この数十年のうちに、私たちは遺伝子や微生物をコントロールして、人間の都合で野菜を栽培してきました。多種多様な品種の多くが消失し、味も変わっていきました。
おばあさんやおじいさんに聞いてみてください。昔の野菜の味を。昔の野菜より甘くなったと答える人が多いでしょう。甘味が増えた分、植物の栄養価は下がりました。もし、人間が手を加えずに、そのまま自然の中で育まれていたら、どんな野菜になっていたでしょう。
自然には、いつも独自の道があり、知性があります。それは、地球が生まれてから数十億年の間に培われた、人間の知識よりも賢いものです。私たちは新参者なのです。私たちは今も学んでいる最中。自然に従えば、自ずとあるべき姿になるはずです。
2-1. ジョンさんからの一言
取材・文/坂田奈菜子
(からだにいいこと2019年6月号より)