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コラム

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ファーストスプーンギフトセットで繊維と木工がコラボ 「laboratory」木工家・田中英一さんの生活を第一にしたものづくりとは?

電車と車を乗り継いで、都心からおよそ45分。埼玉県所沢市・三ヶ島の里に、オーガビッツプロジェクトに参加する木工房があります。

え、木……? 服じゃないの?

そうなんです! いまやオーガビッツが寄付商品づくりにお取り組みをさせていただいているのは、アパレルメーカーだけじゃないんです。

その一つ、オーダー家具を手掛ける木工家・「laboratory(ラボラトリー)」田中英一さんの下を尋ねました。

ファーストスプーンのギフトセットでコラボレーション

2010年4月に完成した「laboratory」のアトリエ。いまも少しずつ手を加えられ、成長している。
2010年4月に完成した「laboratory」のアトリエ。いまも少しずつ手を加えられ、成長している。

オーガビッツが木工房「laboratory」の田中英一さんとコラボレーションしたのは、赤ちゃんのための「ファーストスプーンのギフトセット」。

このファーストスプーンは、さじ部分が直径1.5cmと小さく、初めて乳首以外のものを含む赤ちゃんの口にぴったりフィットします。 また、上唇をうまく使えない赤ちゃんがすんなりと食べやすいよう、さじの彫り込みが浅くなっています。木は体感温度が高く、口に入れた際に違和感が少ないことも特徴です。

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(上写真/写真提供:laboratory)

このたび生まれたギフトボックスを開けると、お月様のかたちをしたぬいぐるみが。もちろん、これもオーガニックコットンでできています。

ぬいぐるみには一部、縫われていない箇所があり、そこから渡良瀬エコビレッジで作られたふかふかのコットンにくるまれて、スプーンが登場します。スプーンを取り出した後は、コットンを詰め直して縫い合わせれば、赤ちゃんが持って遊べるようになっています。

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添付されるカードには、どこの県の桜であるかと、樹齢が書かれている。

実は、このファーストスプーンに使われているのは、東北の桜の木。

そう。東北の桜がきっかけになり、オーガビッツが支援を行う「さくら並木プロジェクト」への寄付つき商品として、今年からギフトセットをご用意いただけることになったのです。

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「さくら並木プロジェクト」で植えられた桜の木の様子。

「laboratory」ってどんなところ?

同じく桜の名所として有名な埼玉県・狭山湖のそばに、「laboratory」はあります。

手掛けるのは、オーダーメイドの家具やオリジナルの内装など。木の個性とオーダーする人の個性を組み合わせ、この世にたった一つの家具・空間を作っています。

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(左)「母屋のいす」と「すわるのいす」、(中央)「shakate」と「八角卓」、(右)ダイニング内観〈写真提供:laboratory〉

「laboratory」は、展覧会や宣伝も含めていっさい営業活動を行っておらず、全てのオーダーが口コミやご紹介によるもの。
それでも、「ほとんどの家具工房は、2〜3年で廃業してしまう」という中にあって、2016年で13年目を迎える”異例の”木工房なのです。その人気の秘密はどこにあるのでしょう?

「laboratory」に込めたメッセージ

英一さんは、もともとゼネコンに勤めていたそう。業界構造の中で、安く買い叩かれる家具づくりの現状を変えたいと思っていた……と言います。
しかし、それよりももっと大きなメッセージがあると言います。

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コラボで生まれたオーガニックコットンの“みかづきさん”を手に話す英一さん(自宅ダイニングにて)

「もともと手を動かすのは好きですけど、作ることが目的で始めたんじゃないんです」と、英一さんは工房を始めた経緯について話します。

「商売することじゃなくて、生活することが目的なんです。生活に家具が必要だから、家具を作る。それだけなんです。
僕は一日のうちに、いろんなものを作りますよ。料理も作るし、庭も作る。素材も木だけじゃなくて、鉄に石……いろんな素材に興味があって、組み合わせて作っています。
その中で徐々に得意なものが出てきたり、僕の作ったものを見た方が「これと同じもの欲しい!」と言ってもらえたりしたことが、たまたま金銭に結びついてる。だから、暮らしを人にシェアしてるって感じなんです。」
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〈自分の生活を自分で作る〉が、「laboratory」のフィロソフィー。
自分の生活を大切にしたい。ならば、自分で自分のためにその環境を用意する。それも、ちゃあんと自分の手を動かして……。

英一さんを見ていると、そうして実際に手を動かして生活を整えていくと、いろんな生活のピースが自然と噛み合っていくように感じます。

たとえば、英一さんのアトリエには、掃除機がありません。

「この場所を作るうえで一番こだわったのは、風通しの良さ。そして、フローリングは無垢材でしょう? すると埃が舞わないから、箒(ほうき)だけで掃除は十分なんです。箒は、収納に困らないのも便利ですよ。
『便利だから』って口実で商売する人は多いですけど、フローリングシートなら埃がじゃんじゃん舞うし、実際は不便になっていることも多いですよね。」
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今回のコラボの基になったファーストスプーンも、もともと自分のお子さん用に作ったものだったと言います。

「7年前(2016年現在)に、長男のお食い初めのときに作ったのが最初でした。知人のプレゼント用にも作ったら、『すごく使いやすいから、うちにも作ってほしい』というご依頼を続けていただいたので、商品化したんです。
だからスプーンも、生活の中から生まれたものなんです。」

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木の個体差によっても色が異なり、経年変化で色が濃く変化していく。左が英一さんがご長男のために作ったという7年前のファーストスプーン。

アトリエには、心から解放されるような、ゆったりとした空気に溢れています。
それは、「送りたい生活」を実現するために、自分の手で細部までていねいに作り込んだ家具や内装が、互いに呼応しあって生み出しているモノ。

明日もその先も、自分の送りたい生活に向けてそっと支えてくれそうな製品が、人の心を掴んで止まない理由のように感じます。

異なる素材を扱う二者が手を取り合って

オーガビッツはコットン。「laboratory」は木……そんな異なる素材を扱う二者が出会うことで、これから新しい可能性がどんどん広がりそう。英一さんは、そんな可能性について、次のように話してくれました。

「樹齢465年
先日、大きな丸太に出会いました。
淡く苔が光るような幹は息を呑むような美しさで私を魅了します。
北海道旭川で育った「なら」の木は、ご縁があって私が引き取り、次の人生を送ることになりました。
一口に樹齢465年いっても、とんでもない年月です。
ポルトガル人が種子島に漂着して鉄砲を伝えた直後。
コペルニクスが地動説を発表した直後に、森のなかで生まれた「なら」の木です。
我々はそこまでいかなくても、常に100歳程度の樹木を料理させてもらっています。
料理ののち、少なくても100年使えるように。
つまり最低でも200年の歴史を作ろうとしているのです。
私が自分のアトリエで木を削り始めてから僅か13年ほどの年月しか経っていません。
もっというと私が生を受けてからカウントしてもわずか43年。
オーガビッツを推進している豊島株式会社は175年以上の歴史があります。
私独りでは非常に短いサイクルでしか歴史を紡ぐことができませんが、
100年単位でモノ作りをとらえ、次の世代に紡ぐ力をオーガビッツには感じています。
淡々とした日常を大切にし、長い目で見たモノ作りをオーガビッツとともに歩ませていただければ幸いです。」

オーガビッツの福田さんも、次のように意欲を語ります。

「これまで繊維業界のみなさんに、洋服・タオル・靴下・雑貨……と、いろんなアイテムで取り上げていただいてきましたが、全く別の業界から、コットンをきっかけにオーガビッツの取り組みに興味を持っていただけて、とてもうれしいです。
繊維と木工……全く異なる業界のように感じられるかもしれませんが、二つとも大地を通してつながっているもの。こうした出会いがきっかけになって、オーガビッツの活動にさらに深みが増していくよう、努力していきます。」
田中英一さんと「laboratory」についてもっと詳しく……
→http://labo-style.com/index.html

(取材・文/Fragments