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コラム

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【インタビュー】オーガビッツとカンボジアをつなぐNature Saves Cambodia-Japan・岡本昌子さん

「みんなで『回遊魚』って言ってるの。とにかく動きまわってないとダメな人!(笑)」。

友人たちにそう呼ばれるのは、NPO法人・Nature Saves Cambodia-Japan(NSCJ)副理事長・岡本昌子さん〈写真〉。岡本さんが動き続けているのは、徹頭徹尾「誰かのため」。その底知れぬ優しさに人の思いが集まり、今年もカンボジアに希望の綿花が咲く。

今回、オーガビッツとカンボジアをつなぐ岡本さんをご紹介する。

NPO法人・Nature Saves Cambodia-Japanは、カンボジアの地雷原をオーガニックコットン畑に生まれ変わらせるプロジェクトを行うNGO・Nature Saves Cambodiaの日本パートナー。

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地域に根ざした新たな雇用を生むNGO・Nature Saves Cambodiaのオーガニックコットンは、地雷原から地雷を除去した畑で作られている。(下段・Photography: Hiroshi Ake)

その副理事長を務める岡本さんはふだん、テキスタイル作家として、ウールを中心とした作品を制作している。

個展やグループ展への出品・企画、講座や教室の運営、公募展の審査員……同時に、公益社団法人日本クラフトデザイン協会の理事長も務める。そんな忙しい日々の合間に、年に2回カンボジアへ渡航。現地の女性たちに織物の技術指導をしている。


手紡ぎのウールにブルーに染めたオーガニックコットンを巻きつけた生地を作り、コートにした作品。〈2010年〉

コットンを通じて新たな収入源を

カンボジアの首都・プノンペンからおよそ一時間。岡本さんが向かうのは、メコン川に浮かぶ島・コーダエ村。この島は、「Silk Island(絹の島)」とも呼ばれ、絹織物の産地として知られる。

コーダエ村のある島は、メコン川に浮かぶ中洲の島。
コーダエ村のある島は、メコン川に浮かぶ中洲の島。

しかし近年は絹織物の需要が低下。これまで絹しか取り扱ってこなかったコーダエ村の人たちだが、NSCJがサポートを続けるNSCがコットン製品作りを依頼し、村の新たな収入源を生み出している。

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コーダエ村の手紡ぎ・手織りの活動をまとめる村のリーダー・ワンさんは、この活動に助かっていると話す。

「コットン製品は新たな挑戦ですが、仕事が少なくなってきたので、NSCの活動に助かっています。」

コーダエ村で使われるコットンはNSCによって、カンボジア北西部の地雷原だった土地で作られたもの。そのコットンを、村の女性たちが「クロマー(伝統の万能布)」と呼ばれる、ストールに仕立てる。

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タネ付きのコットンボールからていねいにゴミや種を取り除き、竹棒を使って綿打ち。さらにそれを丸めて糸車で糸を紡ぐ。どの手順も、昔からこの村に伝わっているやり方だ。草木染めも、昔の文献をもとに村で採れる植物を使って再現している。

しかし、絹織物に関しては高度な技術を持つ村の女性たちでも、コットンは不慣れな素材。せっかくのオーガニックコットンの風合いや心地良さが製品に生かしきれていない、と岡本さんは言う。

「手紡ぎコットンの柔らかい糸をどう織れば風合いが生かせるか? クロマーに向いた織り方とは? ハンカチに向いた織り方とは? それぞれ素材と目的によって、テクニックを使い分けないといけません。それがなかなか難しいみたいです。」

岡本さんは女性たちにノウハウとその使い分けを指導しながら、製品のレベルアップを目指している。

コーダエ村の人々が織ってきているのは、目の細かい緻密な織りが求められる絹製品。しかしストールであるクロマーにはふわっとしたやわらかい風合いがほしい。

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コーダエ村の女性たちがふだん織っている絹織物。細い糸を用い、サイドには伝統的な織柄。
「経糸はもう少し緩めに張って。緯糸を入れるときも強く引っ張りすぎないこと」

と、岡本さんは、実際にやってみせながら指導する。指導を受けたピアさんは言う。

「岡本さんの指導は厳しいけれど、私たちの力になることだからすごくありがたい。頑張りたいです。」
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(写真・下段)絹織物と同じ感覚で織ったため幅が縮んでいる布を、岡本さんが修正して織る。コットンには、異なる織り方が求められるのが分かる。

また、岡本さんはただ指導するのみならず、多様な面からパワフルにプロジェクトをサポートしている。

コーダエ村の仕事を増やすため、オーガビッツをはじめとするさまざまな企業や団体とコラボレーションして企画を開発するほか、コットン畑で働く人たちの負担を減らせるよう寄付を募った。その結果、畑に小屋や井戸、トイレができた。

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(上段・Photography: Hiroshi Ake)

2015年秋には、綿花から綿の種を取り除く機械・ジンニングマシンを導入を目指して、クラウドファンディングに挑戦。原綿加工にかかるコストが大きく減ることにつながった。また、現状を理解してもらいたいと年2回の見学ツアーを敢行したり、あらゆる手段で日本の支援者を広げている。

大好きな人たちが困っているなら、できることをしたい

やると決めたら「回遊魚」のようにさまざまな活動に取り組む岡本さん。なぜ、これほどまでにカンボジアの人たちを支援し続けているのか?

きっかけは2009年。現地で支援活動に当たっていた人物からの誘いだった。
それは山本けんぞうさん。カンボジアの地雷原をコットン畑に変える活動に当たっていた山本さんは、知人だった岡本さんに製品の質についてコメントを求めた。

「初めて見せられたときは、『これじゃ通用しないよ!』って(笑)。ハンカチもクロマーも一様に緻密に織られていて、製品と織り方がマッチしてなくて、使いづらさがありました。」

「じゃあ、手伝ってよ」という山本さんに誘われ、カンボジアに訪れてみると、雑多な町並みに、人の匂いがプンプン漂うカンボジアがたちまち大好きになったという。

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「とにかく寛容でたくさんの笑顔が待っているカンボジアが大好き。九州育ちの私には、カンボジアの人々のおおらかな人柄がやっぱり合うんでしょうね。
私がやっているのは、『カンボジアのために』じゃないんです。そこで出会った人たちが大好き。大好きな人たちが困っていることに対して、できることがあればしたい。そういう気持ちなんです。」

そう話す岡本さんに、女性たちは口を揃える。

「岡本さんと仕事するのはすごく楽しい。来るたびに抱きしめてくれる。優しくて大好き!」

大好な文化と風土を守りながら……

岡本さんがカンボジアを訪れ、コーダエ村で織り指導ができるのは、年に2回の2〜3日。決して多くはない。

いま、岡本さんが一番悩んでいるのは、「どうすれば現地の伝統を大切にしながら指導できるか?」ということだ。
何度指導を重ねても、女性たちは元の慣れたやり方に戻ってしまうことがある。言葉で言って、やって見せて、やらせてみて……コツやテクニックを何度指導しても、期間が空くとついつい慣れた手法に戻ってしまうのだという。

しかしそれは、村の女性たちが長年身につけ続けてきたテクニックだからだと気づいた。

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「彼らのやり方を尊重しながら、じっくりと『なぜ織り方を変えないといけないか』を理解してもらえるようにしたい。それが一度分かったら、自分からどんどん変えていけると思うんです。
ほかにも、織り機や道具も『日本のものを使ったほうがいい』と思うときがあります。でも、一方的に日本から持ち込んで『これを使って』と言うのは、脈々と受け継がれてきたものを、簡単に変えるようなやり方。
そうではなく、文化や伝統に寄り添える方法で改善していきたいです。」

カンボジアの伝統に寄り添いながら、現地に生きる人たちの暮らしを向上させたいと奮闘するNSCJの岡本さんは、オーガビッツとカンボジアをつなぐ、やさしくて大きな架け橋。

オーガビッツはこれからもNSCJとともに、失われてしまったカンボジアの綿繊維の産業を復活させていきたいと願っている。そのために、クラウドファンディングで導入されたジンニングマシンには期待が高まる。この機械があれば、原綿を輸出できるようになるからだ。すると現地の人々のさらなる収入源になるに加え、産業が広く活性化していく可能性を秘めている。

カンボジアの文化と伝統を、オーガニックコットンにていねいに込めて世界へ。そんな未来をいっしょに目指していきたい。

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ソトコト 4月号 カンボジアの地雷原を、綿花畑に! オーガビッツプロジェクト最新レポート
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【レポート】オーガニックコットンの力でカンボジアの大地と暮らしとを取り戻す希望の畑を訪問
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Nature Saves Cambodia-Japanについてもっと詳しく……
→http://naturesavescambodia.org/

(構成・文/Fragments